東京スカパラダイスオーケストラ、30周年記念ベストがチャート好調 世代問わず楽しめる“国民的歌謡集”に

 そしてまた、話題性のあとに残るのは普遍性なんですよね。たとえば、最も古いコラボのひとつであり、今やフェスの定番曲となっている「美しく燃える森 feat.奥田民生」は2002年発表。18年が経った今もまるで古びないし、「あぁ、時代だねぇ……」みたいな気持ちが一切起こらない。今をときめく売れっ子を狙い撃ちにしていけば簡単に話題は作れますが、それでは決して続かなかったし、こうして作品化もできなかったはず。スカパラがこのコラボに課してきた条件、信念のようなものが、ここからは浮かび上がってきます。

東京スカパラダイスオーケストラ / 美しく燃える森

 ポップ=その時代に輝いているアイコンであること。独自性=時流に左右されない喉を持つシンガーであること。二つの条件が満たされているのは当然ながら、時代とともに若手の起用が進んでいったのも特徴的。そもそもは田島貴男、チバユウスケ、奥田民生から始まった“歌ものコラボ”ですから、同じ路線で続けていればアクの強いオジサンだらけになっていた。ハナレグミに声をかけ、モンパチ(MONGOL800)全員とセッションし、片平里菜や尾崎世界観に白羽の矢を立てたのは、このコラボの鮮度を保ちたいという願いの表れでしょう。あるいは、慣れ親しんだ昭和イズムみたいなもので固まらないための起爆剤。スカパラが30年間シーンを生き抜いてきたヒントが、このベスト盤からは見えてきます。

 結論として、これは“いかにもCD世代”のものにあらず。本当に世代を限定せずに楽しめる国民的歌謡集。手前味噌ですが、「めくれたオレンジ feat.田島貴男」の衝撃を今も覚えている私と、「Paradise Has No Border」でスカパラを知った小学生の娘も、この作品を楽しんでおります。

東京スカパラダイスオーケストラ「めくれたオレンジ feat.田島貴男」
東京スカパラダイスオーケストラ「Paradise Has No Border」

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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