ukka、つりビット、tipToe.……アイドル論客4名が回想する、インディーズシーンに起きた数々のドラマ

アイドル楽曲大賞インタビュー(後編)

大森靖子さんはプロデューサーとして優秀(宗像)

ーー大森靖子が“共犯者”を務めるグループZOCからは、14位に「family name」がランクインしています。

ZOC「family name」Music video

宗像:「family name」はつまり名字なわけで、大人になっても家庭環境というものから逃れられない。その思いを10代、20代の女の子たちが見事に表現した楽曲だった。〈なんで産んだの〉という歌詞が出てくる、すごい曲だと思いますね。ZOCを見ていて、大森さんはプロデューサーとして優秀なんだなと思います。ライブに行くと「香椎かてぃ」と書かれたYシャツを自分で作ってきている女の子がいっぱいいて、80年代のレディースの集会に来たのかと思わせられる。ZOCの開拓したファン層は、SNSを見て会場に来た新たな一般層なんですよね。

ガリバー:この数年、アイドルフェスに行くと、BiSHをはじめとしたWACK陣営が新規層を連れてきている感覚を覚えますけど、ZOCはまた別格で女性がとにかく多い。今までアイドルフェスにいなかったような層を引き込んでいるのは間違いないですね。

ーー16位はNegicco「I LOVE YOUR LOVE」です。

Negicco「I LOVE YOUR LOVE」 作詞・作曲 西寺郷太(NONA REEVES) 編曲 西寺郷太&奥田健介(NONA REEVES) MAXI SINGLE TRAILER

宗像:作詞・作曲に西寺郷太さん、編曲には西寺さんと奥田健介さんというNONA REEVESバックアップのもとで制作された曲。西寺さんとNegiccoは昔から組んでる仲ですね。

ーー2019年3月に解散となった、つりビットの「プリマステラ」が19位に入りました。

【公式】つりビット『プリマステラ』MV Full ver.

ガリバー:ファンの思いを感じますよね。さくちん(安藤咲桜)がソロで活躍していたり、小西杏優さんが転校少女*として活動(その後今年1月に脱退発表)していたりと、次の道に踏み出している中でのランクインだったので、より重みがあったと思います。

宗像:「プリマステラ」はイントロからドラマティックなストリングスが鳴り響き、切ないバラードが乗る。解散前にはつりビットの楽曲のすべてを収めた全曲集『Never Ending Story ~All of Tsuribit~』が出たんですよね。つりビットは王道のアイドルを掲げているんですけど、実は“王道”ってはっきりしない言葉。初期の頃はAKB48歌謡みたいなものをやっていたんですよ。それが段々とソウルっぽい曲になってきて、「プリマステラ」はそのまた違うテイストでもある。彼女たちの船旅の終着点ですよね。

ガリバー:つりビットらしいサウンドが結晶化した有終の美だと思います。

ーー20位は、2019年に結成されたIDOLATERの「Swipin’ Flickin’」です。

宗像:ブラックミュージックテイストの濃い楽曲です。

ガリバー:アイドル楽曲大賞としては、ランキング上位の完全ニューフェイスだったわけですが、この間、初めてライブを観たんですけど「めっちゃいいじゃん!」って思いましたね。あえてMVを作らない方針で活動している。

岡島:ASOBISYSTEMによるグループで、振付をTEMPURA KIDZのYU-KAが担当しているのも特徴です。

地方アイドルも2010年代から世代が一周回っている(ガリバー)

ーーそれでは最後に、2020年のインディーズアイドルに期待することを教えてください。

宗像:僕は、フィロソフィーのダンスも真っ白なキャンバスもメジャーに行くから、nuanceに期待しています。横浜のTalking Headsになってほしい。

岡島:アイドル楽曲大賞の上位常連で、2018年2月に解散したアイドルネッサンスの元メンバーはそれぞれ別グループやソロで活動を続けています。そんなex.アイルネの中で、個人的に最もアイルネ的なものを感じさせるのが、百岡古宵さんが所属する「開歌-かいか-」。事務所がsora tob sakanaを擁するZi:zooで、2019年結成組。今年はどこまで伸びるのか、注目しています。

ガリバー:20位台に3曲入ってますよね。

岡島:雑誌『Rocket』で、今座談会をしているアイドル楽曲大賞の4人でクロスレビューの連載をしていて、そこで手島優(NYOUTUBER)さんの「ハミ乳パパラッチ」を取り上げたんです。その時点で『TIF』のラインナップに入っていなくて、その憤りを原稿にぶつけました。別に読まれたわけではないと思いますが、その後『TIF』に出てくれて。こういう楽曲も評価されて上位にくればいいなと思います。(「ハミ乳パパラッチ」は339位)

NYOUTUBER(手島優) / ハミ乳パパラッチ(FULL、モザイク ver.)

ーー「ハミ乳パパラッチ」は、『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系)で取り上げられてランキングが急上昇したというのも面白いトピックでした。

岡島:2020年のノミネートになりますが、nuanceのアルバム『botän』も評価が高いですよね。あとはRAYの「Meteor」が好きです。

宗像:・・・・・・・・・(ドッツ)からの展開で自意識を与えられたRAY。シューゲイザーの音楽性は継承されているわけで、そういった部分が分かりやすく広がりやすくなった。

岡島:ライブではお客さんが盛り上がっている中で外国の人もいたりして、広がっていきそうだなと思いました。振付が面白くてパフォーマンスもいいんですよね。

RAY - Meteor (Official Music Video)

ピロスエ:2019年にアンジュルムとハロー!プロジェクトを卒業した和田彩花が、アプガなどが所属するYU-Mエンターテインメントに移籍したんですよ。すでにYouTubeで何曲か楽曲を発表していて、「Une idole」はフランス語のポエトリーリーディングとエレクトロニカのトラック。年末の『ももいろ歌合戦』に出た時も披露していました。ほかにも児玉雨子とのレギュラー番組『和田彩花と児玉雨子の懺悔室』をやっていたり、意欲的な活動を見せていますね。

【和田彩花】 Une idole 【MUSIC VIDEO】

ガリバー:僕は大阪の地方民としては、ライブ活動を少し控えめにしているRYUTistが6月に地元のホールで大型ワンマンが決まっているので、今年はじめに少しライブをおやすみしていた分伸びてくるんじゃないかと楽しみにしています。あとは、AKSがAKB48グループの運営から撤退して、各姉妹グループに分社化する。AKB48グループが拠点にする街はその影響を受けて、地元のアイドルが生まれるというのはずっと繰り返されていて、そういった部分に変化が出てきたり、盛り上がっていったりするのではないかと期待しています。福岡のIQプロジェクト研究生だったり、ほかにも広島の50天、愛媛のひめキュンフルーツ缶の第2期も早速地元のホールワンマン公演が決まっており楽しみです。地方アイドルも2010年代から世代が一周回っているのを感じますね。

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