嵐 二宮和也の歌声に宿るアーティストに対するリスペクト Mrs. GREEN APPLE「Attitude」カバーを聴いて

 しかしながら、ただ原曲のモノマネをするだけの二宮ではない。大森ら本人に対して、時には自身の解釈やエッセンスを織り交ぜることも、リスペクト精神が表れた部分といえる。大サビを迎える頃には、楽曲の雰囲気を損なわせない塩梅で、自分なりに抑揚をつけるアレンジを披露。楽曲が抱く“誰かを音楽で救おうとする”意志を、二宮なりの勇敢さをもって歌い上げたのだった。

 また、サビの〈A.t.Ti.Tude/私のA.t.Ti.Tude〉のフレーズには、最後の〈de〉が4拍続くシーンがある。ここでも一音一音をブレることなく、それぞれの音を正確にぶつけており、シンガーとしての歌唱力の磐石ぶりを感じられた。以上を踏まえるに、二宮による今回のカバーは“お遊び”のようなものでなく、Mrs. GREEN APPLEの音楽に対して真剣に向き合った機会だったのではないだろうか。

 その姿勢は、カバー音源披露後のコメントにも共通していた。オンエア中、二宮は「このアルバム、すごく良いんで聴いてください」「本当にすごい好きで、ずっと聴いてて」と、彼らの作品を賞賛し、カバーが叶ったことに感謝を示すばかり。これまでに両者の面識はないようだったが、オンエア後には大森がバンドの公式Twitterを通じて反応。「とてもとても光栄です。素敵なカバー、ありがとうございました!」と、二宮の想いが自身にまで届いたことを伝えていた(参考:Mrs. GREEN APPLE 公式Twitter)。

 ここまで振り返った通り、愛聴するアーティストや楽曲に対して真摯に臨みながら、自身もそのファンの一人である気持ちをオープンに発信している二宮。今回カバーした「Attitude」も、Mrs. GREEN APPLEへの純粋な愛情の延長線上にあった行動なのだろう。嵐とMrs. GREEN APPLEの双方のファンが交流を深める架け橋となったことも、彼らが築いた確かな功績といえるのではないだろうか。

 今回は割愛したが、同ラジオでたびたび開催される企画「ニノフェス」では、二宮がお気に入りのアーティストを紹介しながら、彼らの楽曲に対して共感し、時には「一番最初に見つけたのは自分」と冗談交じりに“古参”ぶりをアピールする場面も見られる。二宮が育む、アーティストへの尊敬と感謝の精神が、今後もさまざまなアーティスト同士を繋ぎ合わせ、その歌を必要としている人に〈どうにか届くように〉と願うばかりだ。

◼︎一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

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