私立恵比寿中学、ドキュメンタリー映画3作に記録されたタフでポップな歴史 変わらないグループへの思いや姿勢が軸に

『EVERYTHING POINT -a new beginning-』

 1月3日、日本武道館での廣田あいか卒業、翌日に同会場で6人体制を初披露する怒涛の幕開けを果たした2018年。『EVERYTHING POINT -a new beginning-』では、各メンバーのインタビューが中盤に固められ、6人それぞれの心象にフォーカスをあてた場面が多い。

【期間限定】劇場版 私立恵比寿中学「EVERYTHING POINT -a new beginning-」(2018年公開)

 6人体制を引っ張ろうと責任感を抱える安本。ボーカルパートが増え、振り付けにも関わり始めた柏木。6人体制を「すっきりしちゃったな」と語る真山。苦労と楽しさを天秤にかけたうえで「なんでもこい」と言う星名。エビ中を初期から支える4人が、それぞれの立場からグループについて語る場面はとても興味深く、当時のエビ中を立体的に見せてくれる。

 普段は天真爛漫な小林が「よくも悪くもまとまっちゃったから、壊していかないと本来のエビ中っぽさは薄れていく」と冷静に分析する姿も胸を打つ。最年少の中山も、この頃からよりオープンになってきたことが他メンバーから語られる。意識的にも、潜在的にも、メンバー全員が6人体制のエビ中を完成に運ぼうとしていた姿が見えてくるのだ。

 年末、幕張メッセでの公演前に星名が怪我をする事故があり、5人で大舞台に臨むことになった。その時を振り返り、安本が「見た目は5人だけど中身は6人って感じでやりました」と話すシーンは、1作目の真山の「8人でエビ中」という言葉を想起させる。全員がエビ中という居場所を守り、エビ中であることを誇りに思い、エビ中を楽しもうとしていることが伝わる。その基本姿勢はずっと変わらず、グループの軸と言えるものの1つではないだろうか。

私立恵比寿中学 「クリスマス大学芸会2018 DAY3~スペシャルロイヤルケーキ」LIVE映像
私立恵比寿中学 「MUSiCフェス ~私立恵比寿中学開校10周年記念 in 赤レンガ倉庫~」LIVE映像

 主要な見どころを紹介してきた本稿だが、この作品群は何気ない日常描写や食事シーンも見ごたえがある。札幌の空港で巻き起こった通称「サーモン事件」など、メンバーの人柄をふとした場面に映し出すアプローチがなされているのも特筆すべき点である。なお、ライブ映像もYouTube上で2作品が無料公開されている。エビ中のドキュメンタリーには、私立恵比寿中学という、タフでポップなアイドルの歴史が記録されている。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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