マネジメントからクリエイティブまで、K-POP的要素はエンタメにおける成功例に? JO1、UNINEらから考察

 オーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』で、番組視聴者である“国民プロデューサー”による累計約6,500万票の投票により選ばれた11人組ボーイズグループ・JO1(ジェイオーワン)が、3月4日にデビューシングル(EP)『PROTOSTAR』をリリースした。2月16日にはリードトラック「無限大(INFINITY)」のMVがフルバージョンでYouTubeに公開され、すでに500万回以上再生されるなど話題を呼んでいる。

JO1 l『無限大(INFINITY)』MV
JO1『PROTOSTAR』

 「無限大(INFINITY)」のMVは韓国のクリエイターにより、韓国で制作された。手がけたのはMVやCF(コマーシャルフィルム)などを幅広くプロデュースするA:WE Design(OK Shin)。これまでにTWICE、BLACKPINK、BTS・SUGA、SHINee、EXO・ベクヒョン、NCT 127といったビッグネームのMV制作に数多く携わり、JO1と同じく『PRODUCE 101』シリーズから誕生したWanna OneやX1も担当している。先日アルバムがリリースされ、公開から約1週間で再生回数2000万回を突破したIZ*ONE「FIESTA」のMVもA:WE Designの作品だ。

IZ*ONE (아이즈원) - 'FIESTA' MV

 「無限大(INFINITY)」はJO1の無限の可能性や無限の成長を体現した楽曲。曲名や歌詞からは“無限の広がり”が連想され、MVは「無重力」「宇宙」がキーワードとなっているように感じられる。例えば、冒頭で電灯にぶら下がる靴がふわりと上昇するシーン、川西拓実の部屋にある小物や佐藤景瑚自身が宙に浮くシーン、メンバーたちが惑星のまわりを回るシーン、大平祥生が持つ風船の上に豆原一成が腰掛けているシーンというように、曲中にたびたび登場する「重力から解き放たれるイメージ」が登場するのが印象的だ。

 また、ダンスブレイクの最後にメンバーが上腕二頭筋にキスをする場面は、『PRODUCE 101 JAPAN』でファイナルまで残った本田康祐を彷彿とさせると話題に。「無限大(INFINITY)」のMVが公開されると、曲名に加え「筋肉キス」というワードがTwitterのトレンドにランクインするなど反響を呼んだ。ほかにも「番組でおなじみの練習生をオマージュしているのではないか?」というシーンがいくつかあり、ファンが熱い盛り上がりを見せている。

MVにおけるK-POP的要素とは?

 K-POPにおいて、MVは単なるプロモーションツールの範疇をこえた総合芸術であり、“K-POPそのもの”といえる。そこには、最先端のサウンド、レベルの高いダンスパフォーマンス、多様なファッションとメイク、アート、物語、メッセージ性など、ファンを魅了する要素すべてがつまっている。美術、CG、撮影技術などを総動員してそれらを組み合わせることで、MVはアーティストの魅力や楽曲のカラーを最大限に可視化させているのだ。そしてこの“K-POP的な側面”はJO1のMVにも見出すことができる。

 一般的に、K-POPのMV撮影はスタジオに大規模なセットを組んで行われることが多く、ダンスシーン、ソロカット、グループカット、ユニットカット……と、幾重にも場面が転換していく。「無限大(INFINITY)」を見てもわかるように、衣装は何パターンも用意され、ヘアメイクやビジュアルも多彩に変化するのも特徴の一つだ。当然、通常日本で制作されるものよりも大規模な予算が注ぎ込まれるが、K-POPにおいてMVはそれほど重要視されるものであり、アーティストの命運をわけるコンテンツなのである。

 そもそもJ-POPアーティストはYouTubeで公開されるMVがショートバージョンのみや非公開という場合も多く、誰もが気軽に視聴できるようになったのは最近のことだが、K-POPアーティストではかねてから音源リリース日にフルバーションが公開されることが大前提。YouTubeをはじめとしたソーシャルなプラットフォームでストリーミングされ、グローバルに拡散されていくことを目的に制作されている。そうすることで、既存のファンだけでなく国境を超えて幅広いリスナーにアプローチし、世界中にファンダムを広げ、再生回数やフォロワーといったソーシャルでの影響力を高めながらアーティストのブランド力や広告価値を高めてきた。

 K-POPのグローバルな成功とYouTubeの関係性については数多く語られているのでここでは割愛するが、結果的に現在、韓国のアイドルグループはデビューしたてでもMV公開直後に数百万ビューを達成するのも珍しいことではなくなった。

 ちなみに、韓国で2019年に公開され現在までにYouTubeで1億回再生を超えたMVは、BTSの「Boy With Luv」(7.1億回)、BLACKPINKの「Kill This Love」(7.5億回)、TWICEの「Feel Special」(1.8億回)、ITZYの「ICY」(1.3億回)、TOMORROW X TOGETHERの「CROWN」(1億回)などと、いわゆる“アイドル”にカテゴライズされるグループが占めている。 

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