マネジメントからクリエイティブまで、K-POP的要素はエンタメにおける成功例に? JO1、UNINEらから考察

“K-POP式”のプロモーションやマネジメント

 「無限大(INFINITY)」のフルバージョンMVはファンの熱い要望を受けCD発売前の公開に至ったが、JO1はそれ以外にもコンセプトトレーラーやシングル収録曲のアニメーションビデオを公開している。さらに、デビューシングルリリース日に向けて各メンバーのティーザーフォトを公式Twitterなどを通してカウントダウン式で公開。連日SNSを賑わせている。

 こうしたYouTubeやSNSを利用したプロモーションは、K-POPアーティストがカムバックする際の定番だが、日本を拠点に活動するアーティストとしてはなかなか斬新な取り組みではないだろうか。

 しかしながら、このように“K-POP式”のプロモーション方法やマネジメントを取り入れ、韓国のクリエイターに楽曲やMV制作を依頼するケースは、実はJO1のみにとどまらない。

 たとえば、中国ではかねてから各芸能事務所が韓国式の練習生育成システムを取り入れており、ファンダム文化(広告出資、寄付、バースデーイベントといったサポート活動など)を含むアイドル市場全体がK-POPの影響を受けて形成されている。“中国版プデュ”の『青春有你(Idol Producer、Youth with You)』から誕生し、2019年4月にデビューしたアイドルグループ・UNINEのデビュー曲「BOMBA」は楽曲制作、MV・ジャケット撮影、それにともなうヘアメイク&スタイリング、レコーディングなどすべてを韓国で行っている。

UNINE BOMBA MV full.ver

 また、日本ではソニーミュージックとJYPがメンバーのキャスティング、トレーニング、企画、制作、マネジメントまでのすべてを共同で行う「Nizi Project」が始動しているが、ベトナムではMAMAMOOらの所属事務所RBWと韓国最大の音楽プラットフォーム運営企業カカオMが共同で企画した現地のボーイズグループ、D1Verse(ダイバーズ)がデビューを果たしている。同グループは動画配信サービス「V LIVE」とベトナムの放送局で放送されたサバイバルリアリティを通し、7名の練習生から5名のデビューメンバーを選抜。RBWのアイドル育成とコンテンツ制作ノウハウのもと、韓国でトレーニングを受けデビューに至った。

D1Verse - MONSTER | OFFICIAL MV

 このように、K-POPというジャンルが世界的な音楽市場で地位を確立したことにより、マネジメントからクリエイティブまでK-POPをK-POPたらしめるシステムそのものが、“お手本”や“成功例”として各国のエンターテインメント産業に変化をもたらしている点は非常に興味深い。

 一方、JO1は韓国発のオーディション番組から誕生し、K-POP式の体系化されたシステムを生かしながらも、日本特有のファン文化、ご当地性を含む本人たちのバックグラウンドやストーリー、練習生としての教育を受けていないからこその定型化されていないコメント力……というように、さまざまなファクターが入り混じることで、日本でしか誕生しえないオリジナリティを生んでいる。グローバルな成功を収めた韓国のフォーマットと日本独特のカルチャーの中で生まれ、まさに無限大の可能性を秘めた彼ら。これからどんな化学反応をおこし、どのような現象を生んでいくのかが楽しみだ。

■後藤涼子
編集・ライティングユニットomo!(オモ)として、ガイドブックや韓国エンタメ等の書籍・雑誌・コンテンツ制作に携わる。日韓の俳優やアーティストのインタビュー、翻訳・通訳コーディネートも。著書に『Seoul guide 24H』(朝日新聞出版)ほか。インスタグラムアカウント@ryoco_omo

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