ザ・チェインスモーカーズはなぜ日本でも絶大な支持を得られた? EDMの枠を超える“情感豊かな”歌詞から考察
そうした歌詞の雰囲気とも繋がるように、彼らの楽曲の構造そのものも、EDMのスタイルとは大きく異なっている。The Chainsmokersの多くの楽曲では、EDM的なドロップではなくサビの歌にこそ曲のハイライトが用意され、その結果、多くの人々が合唱できるメロディが生まれている。つまり、彼らの音楽は、フロアやフェスに向けられたEDM/ダンスミュージックというよりも、むしろEDM的な要素を取り入れた王道のポップソングなのだ。
この魅力は、『SUMMER SONIC 2019』でのヘッドライナーへの抜擢を筆頭にした日本での人気にも繋がる部分だろう。EDMのマナー=現在の音楽シーンならではのプロダクションを持ちながら、同時に「歌」を中心に据えた楽曲の雰囲気は、歌謡曲~J-POPへと繋がる日本の音楽の土壌とも親和性が高く、現代ならではのEDM/ポップソングとして彼らの楽曲が広く受け入れられた理由のひとつではないだろうか。
新作『World War Joy』の楽曲でも、そうした彼らの魅力は変わっていない。米マイアミで開催された『Ultra Music Festival 2019』で初公開されたIlleniumやレノン・ステラとのコラボ曲「Takeaway」は、好きだからこそ去っていく男と、彼への気持ちを歌う女のコントラストを際立たせるように、サビで揺れるシンセによって心のゆらぎが表現された楽曲。ハウスやテクノ、R&B、ダブステップを筆頭に様々な音楽性を飲み込んだ現在のEDM的な楽曲でありながら、同時にやはり、王道のポップ曲として聴ける間口の広さを持っている。
一方で、5 Seconds Of Summerを迎えた「Who Do You Love」は、アコースティックギターを主体にしたやわらかな楽曲に巨大なビートやボーカルエディットを加えた楽曲で、別の人へと気持ちが移ってしまった恋人への想いを歌っている。また、ビービー・レクサを迎えた低音の効いたエレクトロR&B「Call You Mine」は、かつては激しく愛し合った恋人との関係が時を経て徐々に薄れていく中で、逆に生まれてくる相手への強い気持ちを表現。サビで繰り返される「”僕のものだと言ったあの日を後悔したことないよ”と、あなたは言った/私のものと呼んでいい?/私のものと呼んでいい?」というリフレインが、実際の状況とコントラストを描くようにエモーショナルな感情を連れてくる。
また、Kygoとの「Family」では、〈一緒に走り抜ける/彼らは僕の家族だ〉と大切な人々への想いを綴った歌詞が印象的な楽曲。MVではJustin BieberやAvicii、ZEDDらのMVを手掛けてきた売れっ子ビデオグラファー、Rory Kramerに起こった車での事故と、そこから再起して恋人と婚約するまでの過程が、実際の事故当時の写真なども加えた形でリアルに記録されている。歌詞を聞く限りでは、同時に彼らがファンヘの気持ちを歌った曲と考えることもできそうだ。訳詞を見るとわかるように、同アルバムにはこれまで以上にソングライティングに主眼を置いた楽曲が多く揃っており、初期から徹底されている情感豊かな歌詞は変わらずリスナーの胸に響く仕上がりとなっている。
大会場を盛り上げることができるEDMマナーのエレクトロミュージックの要素を持ちながら、同時に歌われていることはより普遍的な感情の機微を持ったエモーショナルなポップソングでもある――。これがThe Chainsmokersの最大の魅力であり、最新アルバム『World War Joy』にも、そうしたこのユニットの魅力が詰まっている。
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■リリース情報
『World War Joy|ワールド・ウォー・ジョイ』
2020年2月19日(水)発売
<日本盤CD(全16曲)>
新曲「クローサー (トーキョー・リミックス)」収録
¥2,200+税 / 日本オリジナル・ジャケット仕様 / ボーナス・トラック6曲追加
<日本盤デジタル配信(全15曲)>
2020年2月19日(水)配信
iTunes予約で新曲「クローサー (トーキョー・リミックス)」を今すぐダウンロードはこちら
<輸入盤/デジタル配信(全10曲)>
発売中
<収録曲>
01. The Reaper feat. Amy Shark|ザ・リーパー feat. エイミー・シャーク
02. Family with Kygo|ファミリー with カイゴ
03. See The Way feat. Sabrina Claudio|シー・ザ・ウェイ feat. サブリナ・クラウディオ
04. P.S. I Hope You’re Happy feat. blink-182|P.S.アイ・ホープ・ユアー・ハッピー feat. ブリンク・182
05. Push My Luck|プッシュ・マイ・ラック
06. Takeaway with Illenium feat. Lennon Stella|テイクアウェイ with イレニアム feat. レノン・ステラ
07. Call You Mine feat. Bebe Rexha|コール・ユー・マイン feat. ビービー・レクサ
08. Do You Mean feat. Ty Dolla $ign & Bulow|ドゥー・ユー・ミーン feat. タイ・ダラー・サイン&ビューロウ
09. Kills You Slowly|キルズ・ユー・スローリー
10. Who Do You Love feat. 5 Seconds of Summer|フー・ドゥー・ユー・ラヴ feat. ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー
[日本盤ボーナストラック]
11. Closer (Tokyo Remix) feat. Mackenyu Arata|クローサー (トーキョー・リミックス) feat. 新田真剣佑
12. Takeaway (Sondr Remix) with Illenium feat. Lennon Stella|テイクアウェイ (サンダー・リミックス) with イレニアム feat. レノン・ステラ
13. Push My Luck (Twinsick Remix)|プッシュ・マイ・ラック (ツインシック・リミックス)
14. Call You Mine (Keanu Silva Remix)|コール・ユー・マイン (キアヌ・シルバ・リミックス)
15. Who Do You Love (R3HAB Remix)|フー・ドゥー・ユー・ラヴ (リハブ・リミックス) feat. ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー
16. Family with Kygo (Lune Remix)|ファミリー with カイゴ (ルーン・リミックス) ※日本盤CDのみ収録
<MV視聴リンク>
「ファミリー」
「プッシュ・マイ・ラック」
「テイクアウェイ」
「コール・ユー・マイン」
「ドゥー・ユー・ミーン」(リリック・ビデオ)
「キルズ・ユー・スローリー」
「フー・ドゥー・ユー・ラヴ」