『SXSW』、2つの角度から提示する日本の音楽 打首、キュウソ、人間椅子、Dos Monos……出演アーティストの傾向を解説

『SXSW』2つの角度から提示する日本の音楽

レーベルの一員として、あるいは単独で挑むSXSWとその意義

 『Japan Nite』と『INSPIRED BY TOKYO』以外にも、今年は数多くの日本人アーティストが出演を予定している。イギリス・ロンドンのインディーレーベル<Damnably>が主催するショーケースには、同レーベル所属のおとぼけビ~バ~とHazy Sour Cherryが登場する。60年代を彷彿とさせるオーソドックスなバンドサウンドとポップなメロディが印象的なHazy Sour Cherryは今回が初の海外公演となるが、レーベルの先輩でもあり『コーチェラ・フェスティバル』出演も実現しているおとぼけビ~バ~同様に、今回の出演をきっかけに、海外でその名前を見る機会も増えていくのではないだろうか。

 また、さらに単独での出演枠として、人間椅子、大門弥生、山崎千裕+ROUTE14band、CVLTEが名を連ね、アニメ『キャロル&チューズデイ』の"アーティストとしての出演"も決定している。やはりこちらもオリジナリティの強いラインナップとなっており、特に、日本のヘヴィロック界の重鎮である人間椅子の出演はその象徴とも言えるだろう。

 また、自らフェミニストであることを掲げ、「NO BRA! feat. あっこゴリラ」や「#KETSUFURE」といった楽曲でよりオープンな女性像を提示する大門弥生のパフォーマンスは、それまでサブカルチャーを中心に形作られてきた日本人女性のステレオタイプを打ち破る大きなきっかけになるかもしれない。単独枠は、ショーケースとしてのラベルを"貼られない"からこそ、強い個性を遺憾なく発揮出来る場所でもある。

 以上、本当は全ての出演者を紹介したいところだが、今年の『SXSW』における日本人ミュージシャンと、その傾向について紹介してきた。

 冒頭でも書いた通り、SXSWは"ゴール"ではなく"スタート"の場所である。今では定番となった『Japan Nite』の始まりも「世界で活躍するためのきっかけを作る」ことにあった。だからこそ、今回出演するアーティストが、『SXSW』をきっかけに、世界中の音楽関係者と繋がり、新たな活動への足がかりを掴む様子を見るのを、非常に楽しみにしている。

 また、『SXSW』は「未だ見ぬ新たな何か」を発見する場所である。もしこの文章を読んで、知らないアーティストの名前が目に入ったのであれば、ぜひその音楽を聴いてみてほしい。『SXSW』自体が一つの「ショーケース」なのだから。

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。
シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura

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