ラッパーAwichに”愛”について聞く 女性として、一児の母として貫く生き方とは?

Awichに「愛」について聞く

自身を受容できる強さの源は「全てを買い取る気持ちでいること」


ーー今回のアルバムには、一人の女としての強さが強調されているようにも思いました。特に、「Interlude 2(Good Man)」では、付き合っている相手に啖呵を切る様子が印象的で。一方で、彼氏に対してあそこまで真っ向からぶちまけられない女性も少なくないんじゃないかなって思うんです。ファンから恋愛相談をされることはありますか?

Awich:恋愛相談、めっちゃ来ます。しかも、長文でいっぱいもらいますね。でも、私が言えるのはただ一つで、「愛しかない」ってことなんですよ。「Interlude 2」って実は私も間違ったことを言ってるんです。男も女も、どっちも正しいけど、どちらも間違ってる。そんな状況を表したかったんです。実際に自分の彼氏から「俺は口下手だし、向き合うのも苦手で、勝手に消えるかもしれない。だけど、マジでお前のこと愛してる。それだけじゃダメなの? 他の男がお前のこと傷つけてきたのも分かる。でも、実際、俺はここにいるじゃん。それは評価しないの?」って言われたことがあって。インタールードの中での私の態度は、強い女性からしてみたら「その通り!」って感じに聴こえるかもしれないけど、それって、自分を強いと思ってる女がやりがちなこと。「私はもう傷つかないわ」みたいな態度を取りがちだし、それに、ただ強く言えばいいとは思わない。でも、そうすることで双方の強さと弱さを表現したいと思って。

ーー「愛しかない」とのことですが、恋愛中は特にその感覚にいたるのが難しいというか、感覚では分かるけど、具体的にどういうことなの? と思ってしまうような……。

Awich:だから、みんなの悩みにも答えられないんですよね。「その1、何とかしなさい、その2、何とかしなさい……」っていうルールがないんですよ。でも、愛というものの正体が何って考えていくと、愛は無限だし、普通の引き算じゃないんですよ。自分があげるごとに、愛が減っていく訳じゃないんです。逆に、あげればあげるほど増えていくもの。「First Light」でも、〈与えるほどに増えていくものだからdon’t be afraid〉って言ってるんですけど。自分も相手も、どちらもただ愛すだけ。それに、自分を愛することが、相手を愛することにつながるとも思ってます。

ーー『8』に収録されていた「Crime」、そして『孔雀』の「4:44」や「Lose Control」などにも顕著だと思うのですが、Awichさんが描く恋愛やセンシュアスな表現って、綺麗すぎない生々しさがあるなと感じていて。そこが素敵なところでもあるんですけど、「洗脳」みたいなカオティックなリリックを書くのとは反対に、こうした男女関係について書く時に気を付けていることなどはありますか?

Awich - 「Crime」
Awich - 「4:44」
Awich - 「Lose Control」

Awich:マジで(恋愛に)くらってる時って、「愛が全て」と分かっているけど、「 私のことを愛してくれないともうダメ」と思ってしまう時もある。たとえば、連絡が来なくて、「本当に私のこと愛してるの?」って疑心暗鬼になってしまうこととか。そんな時に 自分を俯瞰して見ることができれば、ああ言うリリックが書けるんです。一時の感情に同化しちゃうと、実際に世界の終わりだと思っちゃうから、何も描写できないんですよ。「私が感じているこの痛みってどういうこと? これってエゴ? この人、私を独り占めしようとしてる?」みたいに、その感情の性質を追うようにしてるんです。そこに繋がると、(歌詞が)書ける。

ーーそのテクニックって、若いだけじゃ修得できないような気もします。豊富な経験があってこそ、というか。

Awich:私、一生恋愛してます。それに、ただ愛を与えたいだけなんです。

ーーそうなると、エゴとかジェラスな感情の定義もまた異なってきますよね。

Awich:でも、そういう感情って幸せの有限を認めてしまってるから、そうなるんですよ。「別の人がきたら私の幸せがなくなる」って感情は、愛や幸せの無限性を認めないことになる。

ーーその考え方って、これまでに色んな恋愛を経てきたからこそ得たもの?

Awich:そうかもしれない。恋愛に関しても、成功やキャリアに関してもそうですね。「この人が成功したら私は成功できない」みたいな気持ちが段々なくなってくるんです。

ーー普通、なかなかそこまでの境地に至ることも難しそうな……。

Awich:でも、それって恐怖をちょっとだけ越したところにあると思うんですよね。たとえば、友達が宝くじに当たったとして、「何でお前が!」って妬むとする。それって、宝くじでしか幸せになれないことやお金でしか豊かさが得られないってことを、自分で認めてしまったことになる。逆に「ヤバイなお前、やったじゃん」って思うことができれば、幸せになれる要素はいくらでもアバンダンス(豊富)に溢れているって認めること。人のことを妬まずに「素晴らしい」と言えることって、そういうことかなと思うんです。

ーーちなみに、Awichさんはリスナーからも「強い女性」と思われていると思うし、実際にそれを体現している女性アーティストだとも思うのですが、そういうイメージに対して「そのとおり!」と思うのか、もしくはそこに対するプレッシャーを感じるのか、どちらでしょうか。

Awich:どちらもありますね。「別に私、強くないよ」って言いたい気持ちもあるし、泣き虫で弱いところもある。「愛が全て」と思っていても、めっちゃ愚痴りたくなる時もある。でも、どんな時でも心のどこかで大丈夫だって信じているんです。これが人生の豊かさだし、こうやって落ちるところがないと、逆に生きてる意味がないじゃんって。自分のことを、どこが強いのか強いて言うなら、弱さを持っている部分もいいって思えているところだと思います。

ーー自分自身を全て受容できる強さ、ですね。

Awich:だから、強くならないといけない時は、とことん強くなります。でもずっと強くいるわけじゃない。バランスが一番ですよね。

ーーそこまで自分を受け止められるコツってありますか?

Awich:全部買取! 全てを買い取る気持ちでいることです。私への反対意見があっても全部買い取って、自分がオーナーになるんです。そうなると、私の手元に残るものがマイナスな感情であろうがラブであろうが、どこが勝っても全て私の儲けになるから。

ーーAwichさんのライブを観ると、実際に女の子たちを鼓舞するようなメッセージを発していたり、それを受けた女性のファンが涙を流していたり、という光景を目の当たりにするんです。それって、とても稀有なことのような気がして。特に、女性リスナーたちにもっとメッセージを届けたい、という気持ちはありますか?

Awich;もちろんあります。今まで女の子の方が男の子よりも不自由してきたっていうこともあるから、その分、女の子にはもっと自由にいてほしいし 、自分を愛することを知ってほしいなって思いますね。今まで抑えられて虐げられていたからこそ、ちょっとアクセルを掛けてあげたい。でもだからと言って、バランスが崩れて「男はいらねえ!」って感じの意味ではないです。ライブ会場では女の子たちを盛り上げた後に、絶対に男の子たちにも「来てくれてありがとう。こんな私をかっこいいと思ってくれてるお前らの方がかっこいいからな」って言うんです。だって自分のマンフッド(男らしさ)に自信がない奴は、絶対に女のことをかっこいいと言えないし、認めることができないですからね。

ーー今、まさに全国のクラブを廻るツアーが開催中ですが、いかがですか。

Awich:クラブはやっぱり楽しむ場所だから、そこでブチ上げるのは余裕なんです。でも、私のライブでは、そこに感動とかエモーショナルさも感じて帰ってもらいたいんです。それは挑戦でもあるけど、今まで大きなライブハウスや地方のクラブでもたくさんライブをしてきて「どんな会場でも感動は起こせる」って証明してるから、みんなもそれを感じ取ってくれると思う。ライブを観に来てくれたり応援してくれたりする人たちの反応に、人間の美しさが表れていると思いますね。

『孔雀』

■ライブ情報
日程:6月15日(月)恵比寿 LIQUIDROOM
詳細は後日発表

■作品情報
『孔雀』
BPMT-1018
価格:¥2,500(税抜)
トラックリスト:
01. Love Me Up (Prod. Chaki Zulu)
02. 洗脳 ft. DOGMA & 鎮座DOPENESS (Prod. Chaki Zulu)
03. NWO (Prod. Chaki Zulu)
04. NEBUTA ft. kZm:AL ver. (Prod. Sam Tiba)
05. Open It Up (Prod. Baauer)
06. Poison ft. NENE (Prod. Chaki Zulu)
07. Bloodshot ft. JP THE WAVY (Prod. JIGG)
08. Interlude 1 (Island Girls)
09. 紙飛行機 (Prod. Chaki Zulu)
10. 4:44 (Prod. Matt Cab)
11. Lose Control (Prod. Chaki Zulu)
12. What You Want ft. IO (Prod. Ke Yano$ & Chaki Zulu)
13. Interlude 2 (Good Man)
14. First Light (Prod. Chaki Zulu)
15. Gangsta (Prod. Chaki Zulu)
16. Interlude 3 (Remember?)
17. Pressure (Prod. Chaki Zulu)
18. Interlude 4 (No Pressure)
19. DEIGO ft. OZworld (Prod. Chaki Zulu)
20. Arigato (Prod. Chaki Zulu)

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