ラッパーAwichに”愛”について聞く 女性として、一児の母として貫く生き方とは?

Awichに「愛」について聞く

「彼女がめちゃくちゃかっこいいと思う」ーー娘のYomi Jahについて


ーーAwichさんは11歳の娘さん(Yomi Jah)を持つ母親、という面も知られていると思いますが、娘さんはお母さんであるAwichさんの作品をどのように受け止めていますか?

Awich:超好きですね。『孔雀』を作ってる途中にも聴かせてました。あの子が選ぶフェイバリットソングは「洗脳」と「NWO」で、めっちゃダークなんですよ。「洗脳」は〈後頭部を圧迫〉ってラインが好きみたいで。私は「それ、ママじゃなくてDOGMAのリリックだよ(DUTCH MONTANA, Dogma & Junkman「Daijoubu」)」って言うんですけどね(笑)。

Awich「NWO」

ーー日本のヒップホップの世界で、一児の母でありアーティストでもあるAwichさんのような存在ってなかなか多くはないと思うんですが、母親であることはアーティストとしての自分に影響を与えていると思いますか?

Awich:うーん……。影響があるとは思います。でも、「私って普通のお母さんって感じじゃないけど、いいんですか?」とも思うし。こんな感じだから、まるであの子の方が親みたいな感じになってる時もある。「子どもがいる」っていうか、「私にはトヨミ(娘)がいる」って感じですね。あの子自身が、めっちゃスペシャルだから。私から、娘に恋バナもよくするし。「あいつ、全然連絡くれないくせに〜……」みたいな。そしたら、冷静に意見を言ってくれる。あの子、本当にGOAT(Greatest Of All ATimeの略で、「史上最高」の意味)なんですよ。

ーー11歳にして、全て分かってる感じがさすがですね。

Awich:本当に半端ないんです。2018年に、ダブルEPの『Beat』と『Heart』をリリースした時、Instagramのインスタライブで曲解説をやってたんですけど、視聴者の中にヘイターがいたんですよ。夜10時くらいだったから、「こんなうっせえ母ちゃん、嫌だ」とか「子どもが寝られなくてかわいそう」みたいなコメントもあって。ちょうどトヨミも寝そうな時間で、その時彼女もわざとギャグで「マミー、うるさい」とか言っていたんです。だから私も「トヨミ、そんなして言うな。だからヘイターたちも何か言うやし、何だば?」て言ってたら、逆にトヨミが「何? どうかした?」って。私が「こんなお母さん嫌だ、って(インスタライブで)言われてるよ」って伝えたとたん、トヨミが起きてきて私のiPhoneを持って画面に向かって「My mom is working, Okay(ママは働いてるんだよ、分かった)? 人の家庭に口出しすんな! じゃあね、バーイ!」って言ったんですよ。そしたらコメントも「トヨミ、やばい!」って。それで、シングルマザーの子や、これからお母さんになる子からめっちゃ称賛のDMが来たんです。今回、「Gangsta」の歌詞にも〈ベラベラ喋んなよ We gon be pulling up, ToyomiがTell you口出しするな〉って入れたんです。あの子が本当に言ってたことだから。

Awich - Gangsta (Prod. Chaki Zulu)

ーーちなみに、娘さん自身もラップや音楽活動に興味を示しているような感じはありますか?

Awich:ラップはあまり興味なさそうなんですが、ステージが好きなんですよね。あと、絵を描くことがとっても好き。これ(携帯の画面を見せながら)は宜野湾市の大会で優秀賞に選ばれたんです。あの子が描く絵や考え方って、めっちゃダークで。5歳くらいの時にハートをいっぱい描いていて、そのなかに覚えたての平仮名で「世界の終わりが知りたい」って書いてたんです。「これ何?」って聞いたら「知りたくない?せかいのおわり!」って笑顔で言われたんです。まー確かにと思いました。彼女は小さい時に父親を殺されてるし、その事件の時私は包み隠さず事実を伝えて、彼女はそれを受け入れた。だから死というコンセプトは身近にあるんです。それと同時に生きる喜びも人一倍わかってる。だからダークなことも明るく気兼ねなく表現出来るんです。私はそんな彼女がめちゃくちゃかっこいいと思う。これからも誰かに決められた善とか悪の方向に左右されず心の声を聞いていて欲しい。

ーーどこまでも、娘さん個人のクリエイティビティを尊重している、と。

Awich:たとえば、トヨミの父親のことや、彼女に黒人の血が通っていることに関しても、昔は私がすごく気を使ってたんですよ。肌色って色の名前がついたクレヨンがあったら、「こんなの使わないでください。娘の肌とこのクレヨンの色、同じですか?」って幼稚園の先生に抗議しに行っていたくらい。でもある日、娘が7歳の時に、1カ月くらいかけてめっちゃ大きい絵を描かせたんです。レストランを使って、そこで毎週ライブペイントをさせてたの。“私の街”みたいなテーマで、そこには私も含め、いろんな人がいる。で、私はトヨミが絵を描くときに「色んな人の肌の色があるから、ちゃんと肌の色を分けて描いてよ」って言ってたんです。でも、いつまで経ってもみんなの肌の色を同じに描くんですよ。「(色を)分けて描きなよって言ってるじゃん」って言ったら「でもマミーたち、ほぼ一緒だもん」って言われて。彼女は絵の中で自分だけめっちゃ黒く描いてるんです。私は娘が「自分は他の人と違うんだ」って感じないようにと思って色を使い分けろって言ってたつもりなんですけど、そしたらトヨミが「マミーたち、別に(肌の色)変わんないよ。トヨミだけだよ、黒いの」って、めっちゃ自信満々に言うんですよ。自分の肌の色の違いをちっとも負に感じていなくて。絵の中でも、自分だけ黒くて真ん中にいて、車の中にいるんですけど、そこからの排気ガスに「HAPPY」って描いてあるんです。私も、「それはそうだわ! お前が一番美しいわ」って。同時に「この子って、考えていることは結構ダークだけど、自分の中でそれを消化する時に明るい気持ちでアウトプットしてるんだ」と思って。その感性がスペシャルだと思うので、とにかく大切にしたいんです。だから、彼女が絵を描くたびに「本当に素晴らしい、これはお前の財産だから」って毎回言ってるんです。

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