Yo-Seaから紐解く、CHICO CARLITOら沖縄出身ラッパーに共通する“メロディアス”なフロウ

 BCDMGに所属するシンガー/ラッパーのYo-SeaがEP『7878』をリリースした。意外にも彼のまとまった作品集はこれが初めて。Yo-Seaは2018年2月に「I think she is」で突如シーンに現れてから、BCDMGやKANDYTOWN周りのアーティストたち、さらに同年代のHIYADAM、Taeyoung Boy、3Houseらとの共演曲を発表し続けていた。また宇多田ヒカル「Too Proud(remix)」をビートジャックした「Too Proud (Remix) feat. Yo-Sea」も話題になった。

Utada Hikaru – Too Proud (Remix) feat. Yo-Sea

 近年はCHICO CARLITOや唾奇というメロディアスなフロウを使うアーティストが沖縄から立て続けに登場した。なかでもYo-Seaのスタイルが新鮮なのは、“ラッパー寄りのシンガー”でも、“シンガー寄りのラッパー”でもなく、ラップと歌が完全にクロスオーバーしている点だ。こういうアーティストは、他にRIP SLYMEのPESとKREVAしか思い浮かばない。そこで本稿ではYo-Seaを中心に沖縄のメロディアスなフロウについて考察する。

USのラッパーたちが本格的に“歌い出した”2016年

 順を追って話していこう。Yo-Seaは、歌うことがとにかく大好きだったとインタビューで明かしている。これを読むと、おそらく彼のスタイルはひとつの明確な何かに起因するものではないだろう。彼が育った環境、音楽をはじめたタイミング、そして世界の音楽トレンドなどが絡み合って生まれたものだと考えられる。

Yo-Sea『7878』

 Yo-Seaは、音楽マニアではなかったが、よく自宅でゴスペルを聴いてリラックスしていたという。さらに家族が好きだったZeebra、RIP SLYME、松任谷由実、山下達郎などにも影響を受けた。教師を目指して勉強をしていたが、やはり歌が諦めきれなかった。しかし、音楽をやりたくてもまったくツテがなかった。クラブやライブハウスには行っていなかったからだ。そんな時、たまたまInstagramで沖縄のビートメイカーを見つける。勇気を出してコンタクトしてみると、気軽にレコーディングに誘ってくれた。「I think she is」はその時に誕生した。それが2016年。この年はUSのラッパーたちが本格的に“歌い出した”時期。そのトレンドが加速して、2019年の現在はラッパーとR&Bシンガーの境界線が非常に曖昧になった。

Yo-Sea – I think she is【Official Video】

 また2016年は日本でもUSヒップホップの歌うフロウが本格的にブレイクした。BAD HOP「Life Style feat. T-Pablow, YZERR」のMVがYouTubeで公開されると同時に驚異的な再生回数を叩き出したことがその象徴だ。さらにいえば、日本でK-POPのムーブメントが再燃したことも見逃せない。韓国にとってアメリカ文化は非常に身近なものだ。それは90年代まで多くの韓国人がアメリカに移民として暮らしていたからだ。ヒップホップサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY』がお茶の間レベルの人気番組なのも、その辺りが深く関係している。当然K-POPアイドルの楽曲にもUSヒップホップのトレンドはダイレクトに影響を受け、それが日本にも入ってきていた。代表的な楽曲はBTS「피 땀 눈물 (Blood Sweat & Tears)」だ。USから始まったメロディアスなフロウは、こうしたさまざまな流れの中で日本に定着していった。

コラムPick Up!

もっとみる

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

映画部Pick Up!