Tinashe、Free Nationals、Kaytranada……早くも2020年R&Bシーンの鍵となりそうな話題作5作をピックアップ

人気R&Bアクトが大集結したケイトラナダ渾身のダンス・アルバム!
Kaytranada『BUBBA』

Kaytranada『BUBBA』

 多方面から高評価を受けたデビュー作『99.9%』のリリース後、『Coachella Valley Music and Arts Festival』や『FUJI ROCK FESTIVAL』などのビッグフェスに出演しながらも、コンスタントに楽曲も発表してきたケイトラナダ。<RCA>からのリリースとなった3年半ぶりのフルアルバムは、幅広い音楽性を提示した前作に対し、彼の主戦場でもあるダンスフロアーに直結したトラック尽くしの17曲50分となった。とはいえ、いわゆるクラブバンガー的な爆発力は控えめで、冒頭の「Do It」から心地の良いミドルテンポの四つ打ちグルーヴが、彼のDJプレイのごとく絶え間なく続く。

 R&B的な側面での注目は、もちろん華を添えるゲストボーカルたち。マセーゴ、ティナーシェ、カリ・ウチス、Vanjess、サー、エステル、ドゥランド・バーナーなど、名前だけでも卒倒モノだ。また、数あるケイトラナダのリミックスワークの中でも随一の人気を誇る「Be Your Girl (KAYTRANADA Edition)」のオリジナルシンガー、ティードラ ・モーゼスは本作中一番のヘビー級トラック「Culture」にて待望の客演を果たしている。ゴールドリンクらが軽快に乗っかるアフロ調の「Vex Oh」や、直接セッションを行ったというファレルとの「Midsection」など、アクセントの効いた楽曲も抜群。踊れてリラックスできる至福のクラブタイム盤だ。なお、今回のアルバムに収まりきらなかった多くの未発表曲が、数カ月以内に発表される予定もあるらしい。おそるべし創作意欲のスーパープロデューサー、弱冠27歳であるというから驚きだ。

Kaytranada - Scared To Death (Music Video)
PUFF LAH

皆が求めていた「アノ時」のアッシャー再び。今シーズン屈指の大注目曲
Usher feat. Ella Mai「Don’t Waste My Time」

Usher feat. Ella Mai「Don’t Waste My Time」

 自身のヒット曲をサマー・ウォーカーと共にリメイクした「Come Thru」も話題のアッシャーが、今度はエラ・メイを迎えた新曲を発表。Hi-Fiveのクラシック「I Like The Way (Kissing Game)」を想起させるTR-808を用いたトラックは、R&Bファンなら誰しもが心躍らせるのではないだろうか。プロデュースはアッシャーの代名詞的楽曲のひとつである「Burn」を手がけた名コンビ、ジャーメイン・デュプリ&ブライアン・マイケル・コックス(ブライアンはエラ・メイのアルバムにも参加)とあって、多くのリスナーが待ち望んでいた『Confessions』期のアッシャーを彷彿させる出来映えに仕上がっている。2000年代初期の楽曲をサンプリングする手法がトレンドな今、まさにその時代のトップを駆け抜けた真打ちが登場。その説得力たるや流石である。昨年から制作が進んでいる新作『Confessions 2』(同名曲も存在するのでややこしい)がリリースされれば、現行R&Bの金字塔的作品になること請け合いだろう。

Usher - Don't Waste My Time ft. Ella Mai

異なる2つのサウンドで攻める最新曲!
The Weeknd 「Blinding Lights」「Heartless」

The Weeknd 「Blinding Lights」

 上記のアッシャーの楽曲が、オールドスクールマナーに沿った2000年代初頭の空気感へのオマージュだとすれば、よりド直球な80’sサウンドへと向き合ったのがザ・ウィークエンドの新曲「Blinding Lights」だ。一聴したときはa-haの新曲かと疑ったが(同じことを思った人がいたようで、すでに「Take On Me」とのマッシュアップ動画もYouTube上にアップされていた)、それでもきっちり現代のムードがあるのが彼らしい。追って発表された「Heartless」は一転、メトロ・ブーミンがプロデュースを手がけたスリリングなヒップホップトラック。曲中では名声とお金で心を失った主人公が愛に再び触れるまでを描いており、復縁したベラ・ハディットのことを歌っているのでは? とも噂されているが、真相はいかに。ゴシップにも事欠かさないウィークエンドだが、同曲は迫真の演技が光るMVも話題となり、自身4曲目となる全米チャート1位をきっちり獲得。活動初期から、数年先のトレンドを示唆するようなサウンドを提示してきた彼が、きたる新作で何を提示してくれるのか。今後のR&B界にとっても実に興味深いところだ。

The Weeknd - Blinding Lights (Live on The Late Show with Stephen Colbert / 2019)
The Weeknd - Heartless (Official Video)

 

RealSound_ReleaseCuration@Yacheemi

◾️Yacheemi
読み方はヤチーミ。ダンサーとして国内~ジャマイカでバトル・コンテストでの入賞を経験し、ひょんなことからヒップホップ・グループ「餓鬼レンジャー」の正式メンバー兼マスコット「タコ神様」(要検索)として加入した異例のフリースタイラー。ナイトクラブを主戦場にしながら、DJ・ライターとしても駆け出しで活動し、バンド「G. RINA & MIDNIGHT SUN」ではダンス&コーラスも担当するなど、各所で擬態を続けている。

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