三浦大知「COLORLESS」は何が凄いのか “無色透明”であることを強く肯定する頼もしさ
三浦大知といえばエンターテイナーという性質上、サウンドやダンスの技巧に焦点があたりやすい傾向にあるが、「COLORLESS」は三浦大知自身が綴った歌詞にもかつてないほどの注目が集まっている。カラーレス=無色透明。器用貧乏という言葉があるように、往々にしてオールラウンダーは“一つの物事を極められない半端者”というもどかしいレッテルを貼られてしまいがち。しかし大知は、その歪んだ意識に真っ向から異を唱えるかのように、何色にでも染まれる、挑んでいける柔軟な姿勢こそが紛れもない特性なのだと高らかに歌う。それも、〈やりたいことが正解〉〈このmy mind 譲らない〉といった至極迷いのないタッチで。事実、先にも述べたように大知は、自らをまだ見ぬ分野へと走らせ続け、そのたびに大きな成功を勝ち取ってきた。キャリアの大半をそうした努力によって切り開いてきた人物が、何に対しても器用に立ち回れる性質を精一杯誇る。これほどまでに屈託のない自己肯定を浴びせられ、頼もしいと感じない人が果たしているだろうか。
また、今回の歌詞には三浦大知の周辺、すなわち昨今の音楽業界に対するアンチテーゼも潜ませてあると筆者は推察する。特に〈カテゴライズって一体?〉から始まる1コーラス目のAメロ。世間の声や流行に翻弄された末、スタイルが停滞してしまったアーティスト、もしくはそうしたケースが生まれてしまうJ-POPシーンへの嘆きのようには聞こえないだろうか。それを踏まえると、アーティストが時に観客側へと回る『FNS歌謡祭』でこの楽曲を歌唱した事実も俄然、含みを持ち始めてくる。とはいえ、決してマイナスを匂わせたままでは終わらないのが大知の音楽。楽曲は、たとえ逆風が吹こうと、信念のもと行動していくことで鎖は断ち切れるのだという、大知自身の経験を投影した勇猛なメッセージへと帰結していく。有言実行を体現する彼の威厳と余裕に裏打ちされた、じつにウィットに富んだ歌詞だと思う。
ステージ上での華麗なるダンスパフォーマンスはいつ観ても筆舌に尽くし難いものがあるが、商業音楽の真っ只中に立ちながら、「COLORLESS」のように制御をかけることなく品質を突き詰めていく大知の音楽性がやっぱり好きだ。ちなみに「COLORLESS」は、2020年1月に発売される三浦大知のニューシングルに収録されることが決定している。これはつまり、他の楽曲がまだ先に控えているという嬉しい暗示でもある。特定の色を持たざる男、三浦大知の次なる変化(へんげ)は果たして何者か、心して待ちたい。
■白原ケンイチ
日本のR&B作品をはじめ、新旧問わず良質な歌ものが大好物の音楽ライター。当該ジャンルを取り上げるサイトの運営、コンピレーションCDのプロデュース、イベント主催の経験などを経て、現在はささやかに音楽ライフを満喫する日々。Twitter