私立恵比寿中学、EMPiRE、Maison book girl、まねきケチャ……刺激的な進化を続けるアイドルグループの最新作

Maison book girl『海と宇宙の子供たち』(通常盤)

 2019年にリリースされた2作のシングル『SOUP』『umbla』の収録曲(「鯨工場」「長い夜が明けて」「闇色の朝」「シルエット」)を含むニューアルバム『海と宇宙の子供たち』。前作『yume』までは、Maison book girlの全楽曲を手がけているサクライケンタの鋭利なセンス(変拍子、ポリリズム、前衛的なコード構成、トリッキーなメロディ/ハーモニーなど)が押し出され、それが音楽ファンの興味を集めていたわけだが、本作はメンバーのボーカルに焦点を当てた“歌モノ”としての魅力に溢れた作品となった。「海辺にて」をはじめ、トラックの音数を抑え、4人の歌声とハーモニーを中心に据えたアレンジは、海外の音楽シーンとも重なり、より洗練されたイメージを醸し出している。ブクガのモードをチェンジを告げる、大きな分岐点となるアルバムだと思う。

Maison book girl / 闇色の朝 / MV
まねきケチャ『あるわけないの』(通常盤)

 2019年1月に2年連続で東京ドームシティホール公演を成功させるなど、アイドルシーンにおける存在感を確実に増しているまねきケチャの2nアルバム『あるわけないの』。前作『きみわずらい』(2018年4月)と同じく、作詞はプロデューサーの古谷完が担当、作曲・編曲は藤永龍太郎をはじめとするElements Garden(水樹奈々の作品など、アニメ関連の楽曲を中心にした音楽クリエイターチーム)所属の作家陣が手がけ、的確なクオリティコントロールがなされている。ラブソングを中心とした収録曲は、切なさ、健気さ、可愛らしさをたっぷり含んだ女の子の恋心を描くことで、リスナーがどっぷりと疑似恋愛に没入できる状況を作り出している。ノスタルジックな叙情性を感じさせる「相思い」、エモーショナルなロックナンバー「愛と狂気とカタルシス」、カラフルに飛び散るアッパー系の夏ソング「SPLASH」など、バラエティに富んだサウンドも楽しい。

まねきケチャ『あるわけないのその奥に』アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」主題歌(ED)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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