ライブバンド・THE YELLOW MONKEYの魅力(後編)
THE YELLOW MONKEYのライブはなぜ魅力的なのか 現場スタッフが振り返る、再集結から新ドームツアーに至る激動の日々
19年ぶりのアルバムを携え実践した“初の試み”
再集結後のアリーナツアーを経て、ライブバンドとしていまだ健在であることを証明したTHE YELLOW MONKEYは、以降も精力的なライブ活動を続ける。2016年11月からは全国ホールツアー『THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016 -SUBJECTIVE LATE SHOW-』(全16公演)、同年末の12月28日には日本武道館での『メカラ ウロコ・27』を開催。2017年秋にはファンクラブツアー『THE YELLOW MONKEY SUPER FC PARTY 2017 -DRASTIC HOLIDAY-』(全8公演)、同年12月には2001年1月以来となる東京ドーム公演『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017』(12月9日、10日の2公演)と初の福岡ヤフオク!ドーム公演となった『メカラ ウロコ・28 -九州SPECIAL-』(12月28日)をそれぞれ行った。
「九州初の『メカラ ウロコ・28 -九州SPECIAL-』は僕の中で特別で。ここまで事務所とガッチリやることってなかなかない気がしてまして、僕らの意見にきちんと耳を傾けてくれたし、ガッチリ“一員”にさせていただきました。特に、10月の末にキャンペーンを九州全県で、4人バラバラの行程で同時にやったんですが、これはすごかったですね。最後はみんな無事に福岡に集結しました(笑)。ライブはもう頭から最後までバタバタで……でも、打ち上げでTYMS青木氏から『また福岡で、ドームでやろう』と言っていただいたときはなんだか救われましたし、今回以上のことをやってやろうとフツフツしています(笑)」(株式会社ビッグイヤーアンツ 尾嶋氏)
2018年は年末12月28日の恒例武道館公演『メカラ ウロコ・29 -FINAL-』のみと寂しい状況だったが、その間にバンドは再集結後初となるオリジナルアルバム制作に着手。2016年以降に発表してきた新曲群とLAで新たに録り下ろした新曲を中心に構成された約19年ぶりのニューアルバム『9999』を2019年4月にリリースした。
THE YELLOW MONKEYはこのニューアルバムを携え、同年4月27日から全27公演におよぶアリーナツアー『THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL-』をスタートさせる。このツアーはセットリストがまったく異なる4つのメニューを用意し、日替わりで演奏していくという新たな試みを実践。2016年以降に行われたどのライブとも、また90年代のツアーともまったく異なる、新たなバンドの姿を提示する絶好の機会となった。
「よくやり切ったな、と思いますよね。普通はひとつのセットリストを軸に部分的に変えるとか、あるいはアンコールを変えるとか、そういうことはよくありますけど、あそこまで様変わりしたセットリストを、50代オーバーのロックバンドがよくやっているなと。しかも演奏が安定していて、終始安心して聴ける。特にドラムがね、アニーが一番良くなったんじゃないかという気がします。ライブってお客さんに左右されるところがあるじゃないですか。中でもドラムはサウンドの心臓であり中枢でもあるわけで、お客さんの空気の違いでブレてはいけない。でも、今のアニーはビートも太くて、周りに左右されないんです。
ヒーセのベースもクリアで太くなった印象が強いですし、エマは昔から変わらない感じはするけど、もちろん今の方が良い。4人合わさってのサウンドだしパフォーマンスだから、やっている彼らは大変だっただろうけど、本当に面白いツアーでしたよ」(倉茂氏)
「6月か7月ぐらいかな、大阪城ホール、横浜アリーナ、マリンメッセ福岡とか、2016年のツアーでもやった会場が続いたんです。そのときに痛感したんですけど……2016年とは全然違ったんですね。この3年の間で、もちろんアルバムも経ていますけど、その変化はなんだったんだろうな? とは思いましたよ。同じメニューでずっと続けるツアーでもないですから、3年前と同じ会場で観たときにその変化をより強く感じて、不思議な気持ちになりました。
たぶん、その成長を大きく支えているのがアルバムの新曲なんでしょうね。やっぱり2016年とはそこが大きく違うので、その差は大きいのかな。1公演の中で新曲を持ち上げなくちゃいけないというのもありましたし、結果新曲が持ち上がったのが良かったなとは個人的には思っています。“新曲+重要な曲”みたいなセットリストが多かったので、普通に新曲が食われて終わるみたいなことにもなりかねないという不安も正直ありました。でも、そんな感じにはまったくならなかったですし」(青木氏)
「安定感が格段に上がっている気がしました。特に1997年の『FIX THE SICKS』から解散まではプロフェッショナルとしての気負いも強かったし、解散するあたりは一か八かみたいな、『命賭けます』みたいなヒリヒリした精神性をちょっと見せている部分もあったと思うんですけど、2016年以降は演奏とか音質とか音楽的な部分を重視して、演奏力とか表現力が豊かになった。そこに今回のツアーでは、さらに余裕が加わった気がしました。
それはなぜかと考えたら、アルバムを作ったということが一番大きかったんでしょうね。MCやインタビューでも言っていましたけど、大昔の『BUNCHED BIRTH』のレコーディングの時と一緒で、みんなで作ってそこで理解しあって、4人がやることを共有できたんじゃないかなと思うんです。シングルだとちょっと“お仕事”っぽく「タイアップ頼まれました、作りました」みたいに1曲で終わっちゃったりするので、5〜6曲まとめてLAで作ったことで『こういう感じをそのまま出せばいいんだ』という考えを共有できると、ライブでもそのトーンで演奏することができる。今までももちろんまとまっていたとは思うけど、アルバムによって4人の方向性がよりひとつになって安定したんじゃないですかね」(大森氏)
各地のイベンタースタッフも、このツアーには特別な感情があるようだ。
「2019年のアリーナツアーは徳島公演の1本のみだったのですが、なじみの曲から新曲まであっと言う間、時間を感じさせないライブで、もちろん完成度も高く非常にいいライブでした。進化というか観ていて安心するライブでした。四国公演が20年ぶりということもあり、お客さんも満足していたようだったので、なんといいますか、感無量でした」(株式会社デューク 西村氏)
「ひととおり経験した結果、削ぎ落とされてダンディになった、でも中身は子ども、という進化を遂げたと感じています。シンプルなのにゴージャスな“出汁”が効いているというか、曲にもステージパフォーマンスにも、シモネタもありながら、大切なものはビシッと伝える強さが増したと思います」(株式会社ジー・アイ・ピー 菅氏)
「このツアーではキャリアを積んでもなお、いろいろなことに挑戦しているのが見えてきました。セットリストが4パターンあって、それぞれ半分くらい曲を入れ替えている。札幌の2公演はハートとダイヤでしたが、スペードとクラブはどんな感じなんだろう? って気になっちゃって、ほかの地方まで観に行きましたからね。曲が毎回変わるっていうのは演奏する側にとってとてもハードなことだけど、それを普通に、しかも余裕でできちゃうっていうのは、やっぱり長年の積み重ねがあってこそだと思います。進化をどこに感じるかというと、そういったキャリアに甘えないチャレンジ精神旺盛な部分でしょうか」(株式会社マウントアライブ 山本氏)