アリゾナ・ザーヴァス「ROXANNE」に見るヒットの方程式 リル・ナズ・Xに端を発した新時代のスター誕生

 面白いのは「ROXANNE」のヒットを巡り、米ビルボード担当者がこの曲のヒットの理由や今後どこまで上昇するかなどを議論していること。チャートのプロにとっても「ROXANNE」が興味深い事象と捉えていることが解ります(参照:billboard)。

 一方で気になるのは、その米ビルボードソングスチャートにおける登場2週目の伸びが緩やかなこと。サブスクリプションサービスで大ヒットする曲は急上昇する傾向があったのですが、11月23日付米ビルボードソングスチャートで「ROXANNE」は27位、7ランクアップにとどまっています。米Spotifyデイリーチャートで首位を獲得はしたもののその再生回数が増えたのは、プレイリストで偶然アリゾナ・ザーヴァスの曲に触れた人よりもアリゾナの音楽を積極的に聴こうとした人が多く、およそ7割がコアなファンの聴取だと米ビルボードは分析しており、曲がまだ十分には世間に広がっていないと言えるでしょう。とはいえ総合チャートに登場したことで知名度が上昇、また米ではSNSでのシェア回数に基づくSpotifyバイラルチャートでも最近2位以内をキープしていることから、口コミでの拡大に伴い曲や歌手名が広く浸透していくことが予想されます。またレコード会社との契約に伴いラジオでも積極的にオンエアされるようになると考えれば、ラジオエアプレイも指標のひとつである米ビルボードソングスチャートで順位を上げると思われます。「ROXANNE」は世界全体のSpotifyデイリーチャートでも現在4位、日本でも100位以内に入ることが増えたことから、年末にかけて世界中を席巻することは間違いないと思われます。

 今後はアリゾナ・ザーヴァスのように、レコード会社に所属せずともSpotifyやTikTokでヒットした歌手はどんどんフックアップされることでしょう。6月のリリース後、現在までにTikTokにて84万近くの動画に使用された「Yellow Hearts」(最新米ビルボードソングスチャート81位に初登場、米Spotifyバイラルチャートでは1位をキープ)を発表したアント・サンダースが、ソニー傘下の<アリスタ・レコード>と契約を結んだことが今週発表されました(参照:Billboard)。SpotifyやTikTokといった新たなメディアの興隆は、リル・ナズ・Xに端を発した新時代のヒットの方程式とスター誕生に繋がっているのです。

アリゾナ・ザーヴァス「ROXANNE」

■Kei
チャート愛好家。青森県弘前市のFMアップルウェーブ『わがままWAVE It's Cool!』(毎週日曜17時)スタッフのひとり(DJネームはブレストコナカ)。音楽/ラジオに関するブログ【face it】を日々更新中

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