Fear, and Loathing in Las Vegas、新体制後も揺るがないバンドとしての“生き様” メンバーの他界や脱退から再帰するまでの姿
Fear, and Loathing in Las Vegas(以下、ラスベガス)の音楽には誰にも消せない炎が宿っている。その炎はあらゆるものを飲み込んで、さらに激しく、より一層熱く燃え盛っているようだ。
今年9月には、新体制によるワンマンツアー『Carry on FaLiLV』を東名阪で開催。筆者がZepp DiverCity(TOKYO)公演を観た際にメンバー5人の不屈の魂が熱いメッセージとなり、観客を狂喜乱舞させる光景を確認して、元気を100倍もらったような気分になった。
2008年の結成時からラウドとエレクトロを掛け合わせ、全ベクトルから総攻撃を仕掛ける新種のエクストリームミュージックを作り上げ、圧倒的なテンションをキープしたまま10年間走り続けてきた彼ら。デビュー当時から完成された音楽スタイルと天井知らずのアグレッシブなライブを見せつけ、活動と共にファン層をどんどん拡大させ、昨年4月の幕張メッセ 国際展示場 9~11ホールでのワンマン公演には過去最高の1万人の観客を集客。ここで重要なのはリスナーに対して色目を使うことなく、自身の音楽スタイルを曲げなかったという点だ。最初に掲げたオリジナリティ溢れるサウンドをひらすらブラッシュアップさせることで、一般の音楽リスナーまで裾野を広げたところにラスベガスのすごさがある。
しかし、その幕張ワンマン公演後の2018年6月にオリジナルメンバーのSxun(Gt)が脱退。6人から5人体制でリスタートして活動したものの、2019年1月12日にKei(Ba)が急性心不全で他界した。バンドは人生と同じく、山があれば谷もある。その中でもメンバーの死去という、もっとも深い谷に突き落とされた彼らは悲しみに暮れる日々を過ごす。当然だろう。そこから這い上がるためには時間が必要だった。
それから2019年6月に新メンバーのTetsuya(Ba)が加入し、『SUMMER SONIC 2019』のステージでラスベガスは見事に復活。その後に冒頭にも書いた新体制によるワンマンツアーに「Carry on」=(続ける)という決意表明とも言えるタイトル名を付け、以前と変わらぬ圧倒的なパフォーマンスを披露した。
そして、前置きが長くなったけれど、ここに新体制で初となる6thアルバム『HYPERTOUGHNESS』が早くも完成。今年復活ライブを観ている方はあまり心配していないと思うが、まだ新生ラスベガスのことをニュース記事だけで知っている人の中には「大丈夫なの?」と不安に思うファンもいるかもしれない。最初に言っておこう。何の心配もいらない。どこから聴いてもラスベガスとしか言いようがない、不変のオリジナルブランドを高らかに鳴らしている。制作面に関してもクリエイティブな楽曲作り(アイデア)においては、今作もデビュー時から大きな変更はない。
今作の中身については後述するとして、ラスベガスは2019年7月17日にサブスクリプションサービスで過去作すべてを解禁し、今や全楽曲聴き放題になっている。その一方でCDのジャケットやブックレットの歌詞を眺めながら、作品世界を堪能したいという音楽リスナーに向けて、自分たちの"こだわり"を散りばめることも忘れていない。
今作の表紙ジャケットは宇宙船の内部を描いており、その中心には強力なエネルギー体が発光したアートワークが描かれている。新体制で力を合わせて、またここから突き進んでいく……そんなイメージが掻き立てられる。ちなみに、このエネルギー体の部分は暗闇で幻想的な光を放つ蓄光素材を使用している。
また、ブックレットの中身は歌詞はもちろん、宇宙船の窓から過去の作品アートワークを覗き見るデザインが施され、今年結成11年目を迎えたバンドの歴史を俯瞰したような作りになっているのもポイントだ。彼らの作品世界にどっぷり浸りたいと思うあなたは、ぜひCDを手に取ってもらいたい。