Fear,and Loathing in Las Vegasは独立独歩で突き進む 前例なしの音楽性&活動スタンスを考察

FALiLV“前例なし”活動スタンス紐解く

 前例がない。お手本がない。比較すべきアーティストが見つからない。これは控えめに言っても、驚きに値する出来事だ。国内や海外を見渡しても、Fear,and Loathing in Las Vegas(以下、ラスベガス)ほど確固たるオリジナリティとメディア露出を極端に絞った活動スタンスを貫いているバンドはいないのではないか。そう、2008年結成時から、ふと気付くと10年間に渡り、サウンドとプロモーションにおいて独立独歩の道を突き進んでいる。まさに「ラスベガスの前にラスベガスなく、ラスベガスの後にラスベガスなし」という10年間だった。

 振り返ると、2011年以降に発表した作品すべてがオリコンチャート10位以内に入り、2016年1月7日に初の日本武道館公演を完売させ、そして、先月4月14日に行われた、アルバム『New Sunrise』に伴う47都道府県を制覇したロングツアー(全公演ソールドアウト!)のファイナルとなった幕張メッセ公演においても、キラッキラにして超ド級のラウドパーティーをブチ上げた。デビュー時からライブを観続けてきた一人として、今回の幕張メッセは全国津々浦々回っただけあり、磨き抜かれた楽曲と鍛え抜かれた技量を総動員した凄まじい爆発力を見せつけてくれた。その幕張メッセ公演で5月2日発売のニューシングル『Greedy』から「Keep the Heat and Fire Yourself Up」を初めてプレイ。これはTVアニメ『覇穹 封神演義(はきゅう ほうしんえんぎ)』(TOKYO MXほか)第1期オープニング曲に起用され、もともと中国の怪奇古典小説『封神演義を原作にしていることもあり、楽曲はそれを踏まえたものになっている。イントロからオリエンタルな旋律が聴こえ、それから銅鑼を叩く音色が響き、それ以降はラスベガスらしいめくるめく曲展開で聴く者をグッと引き込んでいく。また、幕張メッセ公演終了後、最新MVとなる「Treasure in Your Hands」の映像が流れ、これも同作品の第2期オープニング曲に使用される形となり、中盤に落差の激しいブレイクダウンパートを設けたりとフック十分の曲調だ。表題曲の「Greedy」はゲーム音を配しつつ、ゴリゴリの演奏で畳み掛け、ほかに効果音やラップパートを盛り込んだりと、今作の全2曲どれも、クオリティが非常に高い。

Fear, and Loathing in Las Vegas - Treasure in Your Hands

 ラスベガスの音楽性を語る上でハズさせないのは、「ラウド」と「エレクトロ」の両要素である。2010年に発表された記念すべき1stアルバムである『Dance & Scream』という表題は、このバンドの音楽的アイデンティティを象徴している気がしてならない。ダンスミュージックとスクリーモの融合を掲げたサウンドは、当時衝撃的だった。今この1stアルバムを聴いても全く古臭さを感じないし、リアルタイムで聴いた時にはこのテンションとクオリティを次回作以降も維持できるのか、と余計な心配をしたくなるほどだった。結果的にはそのテンションとクオリティを維持するどころか、楽曲のアレンジはより緻密になり、曲展開はさらにスピードとカオスを求めて、モンスターのごとく逞しく成長を遂げていった。

 ラウドとエレクトロの融合で真っ先に思い浮かぶのは、イギリス発のエンター・シカリが2007年に出した1stアルバム『Take to the Skies』だ。"レイヴ・メタル"という呼称で激しい音楽にアンテナを張っているファンの心をとらえ、僕自身も大きな衝撃を受けた。また、日本のCrossfaithもメタルコアにエレクトロの要素を加えたりと、同時期にその手の音楽が出てきた。海外のメタルコア系バンドでもピコピコ音が標準装備となり、シーンを席巻するようになった。ただ、ラスベガスの場合は誰とも似ていない。突如舞い降りて来た異端児だった。彼らの音楽をヘタにフォローしようとすれば、それは「ラスベガスっぽいね」としか言われかねないほど、オリジナリティの高い音楽を作り上げていたのだ。

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