オーディション企画『ONE in a Billion』制作スタッフインタビュー
坂道オーディションやNizi Projectも制作 ソニーミュージック新人開発スタッフに聞く、今求められるアーティストの条件
アーティストの素を見せることはブランディング作業の一環
ーー『ONE in a Billion』のオーディションには候補者同士の合宿審査も含まれており、その過程も視聴者に見せていきます。
日高:これは3次審査の中に含まれているのですけど、ステップを踏んだ候補者の色々な良い部分を見たいし、視聴者の方にも見ていただきたくて。最初の話に戻りますけど、「歌がうまい」や「いい曲書けます」だけではダメな気がしていて、その人がステージに立ったときの佇まいや喋り方、そういうところのカリスマ性と人間力も大切な気がするんです。そういう部分を共同生活の中で視聴者に見せていけたらいいなと。候補者も成長するだろうし、そういう進化の可視化のためにも合宿を取り入れています。
須藤:そういう部分を好きになってもらって、さらにデビューしたあとにより応援していこうと思えるように。
日高:誤解されたくないのは、アーティストの素を見せることによってアーティストの価値を落とすというわけではなくて、むしろブランディング作業の一環だと捉えてほしいなと。例えばあまり喋りが得意じゃない方も、生活しているところをモニタリングされるだけでより親近感を覚えてもらえるかもしれない。「本当は視聴者に親近感を持ってほしいんだよね」とファンの方に対して思っている人がいるとしたら、合宿することでファンとの距離が縮まってアーティスト活動にプラスになるかもしれない。必ず価値の上がるような合宿にしたいと思っています。
ーー声だけでは見えない部分が可視化されることで、視聴者からも「もっとこうしたら、こういう部分は伸びるんじゃないか」と指摘しやすいし、候補者側にとっても成長のきっかけづくりになる。むしろそういう声がバンバン出ることで候補者、視聴者、番組それぞれの相乗効果にもなるでしょうし。
日高:こちらからサポートできる部分もより見えやすくなります。たぶん、自分が足りない部分さえわからないという人も中にはいると思うので、そこに自分でも気づけるきっかけにもなると思います。そうすると、ソニーミュージックに対して「僕はこういうものが欲しいんです」と言いやすくなるし、それに対して視聴者の反応があったら「こういうものが求められているんだ」みたいに求められているものもわかる。三者がいろんな気づきを得られるんじゃないかなと思っています。
「日本のオーディションといえば」というブランド力をつけたい
ーーそこから2020年2月5日にZepp DiverCity(TOKYO)でのファイナルライブ審査を経て、グランプリが決まると。その後ソニーミュージックからデビューすることになるわけですが、そのデビューも「2020年春」に予定されている。レーベル主導のオーディションとしても、動きの速さが今までのものとも違いますよね。
須藤:そこもひとつ、大きなポイントかもしれないですね。
日高:結構無茶ですよね(笑)。これまでのオーディションだったら合格後に育成期間があって、そこからどんな曲を書けばいいんだろう? とか考えるわけですけど、今回は合格後に即プロのアーティストとしてデビューします。「2020年春、即デビュー」と謳っているので、今が11月なのでもう半年もないですね(笑)。本当に人生がガラッと変わる方がこの中にひとりいると思うと、僕らとしても衝撃的ですし、人の人生が180度変わる瞬間を目の当たりにするかと思うと鳥肌が立ちます。
ーーでは、グランプリが決まってからデビューするまでの過程も見せていくことになるわけですか?
須藤:そうなると思います。
日高:成長の過程を視聴者に共有し、応援していってもらいたいです。
ーーまた、今回のオーディションの流れを目にして「こういうオーディションなら自分も参加してみたい」と思う人もどんどん出てきそうです。
須藤:デビューが決定するまでの一連の流れをうまく見せられて、それを面白いと感じてもらえたらいいですね。
日高:そこも二軸で考えていて。受ける側からは「あの『ONE in a Billion』からデビューできたらいいよね」みたいな、ビッグドリームを掴むチャンスだと思ってもらえたらいいし、「あのオーディションで勝ち抜いた人なら間違いない」っていうオーディションにしたい。もう一つの軸は、観る人たちが「昨日『ワンビリ』観た? 早く観たほうがいいよ?」みたいなことをSNSでつぶやきたくなる。そういう二軸で注目される、「日本のオーディションといえば」というブランド力をつけていきたいなと思っています。
ーーそれによって今後第2弾、第3弾と続いていくでしょうし。
須藤:継続的なオーディションにしてブランド化していきたいというのは、立ち上げの時からの目標としてはあります。
ーー今回は男性ボーカリスト限定でしたが、次回以降は異なるテーマかもしれません。
日高:そのテーマは楽しみにしていてほしいところですし、我々もいろんな概念にとらわれずに決めていきたいなと思っています。レコード会社ではあるんですけど音楽だけにはとらわれずに、いろんなことに挑戦していきたいという思いはあります。
ーー最後に、それぞれ『ONE in a Billion』に期待してほしいポイントを挙げていただけたらと。
須藤:単純に歌や曲がすごい、ビジュアルがいいとか、そういったひとつの武器だけじゃなくて、本当に広い意味でセルフプロデュースできる、自分自身をどう生かして発信していけるかがこれから先、より重要になってくると思います。それがエンタメの世界で当たり前になってくると思うんです。視聴者の方々にはそれぞれの発信の仕方などを楽しみにしていただき、好き好みを探してもらいたいです。
日高:これは新人発掘にも繋がりますが、ライブを観させてもらったときに「このアーティストのライブにもう一度行きたい、このアーティストの音源をもう一度聴きたい」という気持ちになるかどうかを自分の中で大切にしていて。皆さんにもその視点で『ONE in a Billion』をぜひ観てほしいなと。審査の過程に入っていただく際、私だったら、僕だったらこの人の音源を買うかな、ライブに足を運ぶかな、みたいな視点で楽しんでもらいたいです。次にどんなことが起きるのか僕らも想定できないこともありますけど、そういうところでも今までのオーディション番組やリアリティショーの概念を取り払っていければと思いますし、みなさんと一緒に未来のアーティストを見つけていけたら嬉しいです。
(取材・文=西廣智一/写真=はぎひさこ)
■オーディション情報
『ONE in a Billion』
公式サイト
公式YouTubeチャンネル
<概要>
世界で活躍をする次世代の才能を探し出すオーディションブランド『ONE in a Billion』
2019年9月より始まる第1シーズンは“声”をテーマに、男性ヴォーカリストを募集。
オーディションの様子は番組公式アンバサダーにスカイピース、番組公式MCにガーリィレコードチャンネルをむかえ、YouTubeチャンネルにて10月25日より配信開始。
グランプリは2020年春、ソニーミュージックよりメジャーデビュー。