韻踏合組合が“内情”を交えて語る、10作目で辿り着いた制作スタイルの変化 MVの秘話も

韻踏合組合が明かすグループの“内情”

 ハードライムと巧みなマイクリレーで、関西はもとより全国に名を馳せる韻踏合組合が記念すべき10枚目となるアルバム『マラドーナ』を完成させた。前作『王手』から2年ぶり、じっくり時間をかけてつくられた本作には、9組ものプロデューサー陣が参加。漢 a.k.a. GAMI、NIPPS、Moment Joonという世代別の異才3人を一同に集めた楽曲や、ミクスチャーバンドと作った楽曲、さらには前2作にはなかったソロ曲も収められ、いい意味でハチャメチャなところが痛快、実にバラエティに富んだ仕上がりとなった。往年の名サッカー選手の名前を冠した今回のアルバムはどのようにして生まれたのか。気になるアルバムタイトルの由来や先行公開された各MVの見どころ、さらにはデビュー20周年を迎える来年のことまで、たっぷりと話を聞いた。(猪又孝)

ハッシュタグ「#スポい」でお願いします(SATUSSY)

——前作『王手』を発売したときに「次のアルバムが10枚目になるので、そこに王手をかけたいです」というようなことをよく発言されてました。

SATUSSY:言ってましたね。

——ということは、今回のアルバムの構想はその時点からあったんですか?

HIDADDY:いや、毎回違う世界に行くんで。もう将棋からは離れていて(笑)。

ERONE:あのときはちょうど将棋のブームが来ていたんです。

——当時は天才中学生棋士と呼ばれた藤井聡太プロの活躍もありました。

SATUSSY:ただ、今世の中はラグビーなんですよね(笑)。

HIDADDY:タイトルにサッカー選手の名前をつけたのに(笑)。

左から:DJ KITADA KEN、遊戯、HIDADDY、ERONE、SATUSSY
韻踏合組合
SATUSSY
遊戯
ERONE
HIDADDY
DJ KITADA KEN
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左から:DJ KITADA KEN、遊戯、HIDADDY、ERONE、SATUSSY
韻踏合組合
SATUSSY
遊戯
ERONE
HIDADDY
DJ KITADA KEN
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遊戯:毎回、具体的なビジョンはないんです。あのときもアルバムタイトルが『王手』だからそう言わざるを得なかったという。後付けです(笑)。

SATUSSY:今回のテーマはと言うと「スポい」ですね。スポーツっぽいっていう。ハッシュタグ「#スポい」でお願いします。(©️MURA-T)

——今回のアルバムはいつ頃から制作を始めたんですか?

ERONE:『王手』が終わってすぐ作り始めました。

——そのときはどんなことを考えていました?

ERONE:「一網打尽」(2014年のアルバム『NOW』収録曲で、のちにNORIKIYO、SHINGO★西成、漢が参加したリミックスも発表)を作ってから、「一網打尽」を超える曲を作ろうというのがひとつの大きなコンセプトというか。それをひたすらやってる感じですね。

HIDADDY:でもできないんです、なかなか……。過去の自分は超えられない(笑)。

——そんななかで最初にできあがった曲は?

ERONE:「マイクリレー」ですね。

——「マイクリレー」は、運動会の定番曲「クシコス・ポスト」をサンプリングした耳馴染みの良い曲でした。

韻踏合組合「マイクリレー」

SATUSSY:「一網打尽」みたいなのを作らないといけないっていうのは裏テーマであるんですけど、ある種吹っ切れた感もあって。もう自分たちがやりたいようにやったほうがいいんじゃないか、もうちょっと違うベクトルで作った方がいいんじゃないかって考えながら完成したのが「マイクリレー」です。ただ、この曲はサビが1年半くらいできなかったんです。バースはとっくにできてたんですけど、サビは7、8回作っても完成せずに置いていた。そしたら、ふとSATUSSYが「これや」って思いついて、ジブさん(Zeebra)の「まわせ、まわせ、まわせ~」の声を入れたんです。

——T.O.P Rankaz「INNER CITY GROOVE」のZeebraバースをサンプリングしています。

SATUSSY:締め切りがあると、イマイチやけど出しちゃえっていう空気になってしまうことがあるんですよ。でも今回は、いいものができるまで発表しないっていう姿勢でやれたから、みんなに感謝してます。アイデアがある日降りてきてつくる、みたいな。そういうことが今回は全曲においてできたんです。

——じっくり時間をかけて作ると。

SATUSSY:ジブさんのラインは、ある日スーパーで買い物をしてるときに「マイクまわせ、まわせ、まわせ」って浮かんできて「これや!」ってなったんです(笑)。

——前々作『REAL GOLD』、前作『王手』はポッセカットのみでしたが、今回はソロ曲も入っていますね。

HIDADDY:僕のソロの「FOOTWORK」は、息子がダンスを始めたんでブレイクダンスの曲を無性に作りたくなって、実費で作りました。それをSATUSSYに持っていって「組合長、韻踏のレーベルから出してください」って。

SATUSSY:内情(笑)。

遊戯:最近はずっとグループで作ってたんで、1曲ずつくらいはソロを入れようかという話になったんですよ。で、HIDADDYが一番先につくってて「これをアルバムに僕のソロとして入れてくれませんか?」っていう流れやったんです。

ERONE:今回は入ってる曲以外にもいっぱい曲をつくっていて。その中で厳選した10曲だけが入ったアルバムになりました。

SATUSSY:最初、ビートジャックもやってたんです。

ERONE:やってたな。「具志堅」(Lil Pump「Gucci Gang」のビートジャック(韻踏合組合Twitterより https://twitter.com/IFKRECORDS))とか。

——チャイルディッシュ・ガンビーノの「This is America」をビートジャックした「This is Amemura」もありましたね。

ERONE:僕らは毎週何かしら曲を作ってるんですけど、あるときビートジャックしてみようか? っていう動きになったんですよ。ビートジャックをして、そのビートを差し替えたら上手くいくんちゃうか? っていう思惑もあったんですけど、それをやっても意味ないなと。その結果、今回はそういうのがまったくない。全部オリジナルで作った楽曲で、1曲1曲、トラック自体も「こういう感じで」ってお互いにアイデアを出し合って作ったのが大きいですね。

——ソロ曲はサウンドの方向がバラけているし、ポッセカットでもミクスチャーロックにアプローチした曲があったりして、バラエティに富んでますよね。

SATUSSY:今回は今までより一層、全曲リード曲、シングル曲になり得る感じですね。前作はプロデューサーも2、3人だったんですけど、今回はDJ PMXさんとか、初めてやってくれた人も多くて。

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