水谷果穂、歌を通して伝えた歌手/女優としての歩み miwaやスピッツのカバーも披露したバースデー公演
また、『なつぞら』は、朝ドラ女優としての新たな顔を作るきっかけとなった作品。主題歌であるスピッツの「優しいあの子」も微笑みを浮かべた表情でカバーした。これら2曲のように、自らが出演した作品に付随する主題歌に込められた思いは、自身の楽曲と同じくらい、深く、大切なものなのだろう。続く、『リーガル・ハート~いのちの再建弁護士』のエンディング主題歌となった「朝が来るまで」も歌いきることで、今年の夏の記録を辿った。
後のMCで、先日ハワイに行った際に、この会場に埋まる予定の人数分を考慮して、一個一個レジを通してもらう形でお土産を買ったと伝えている最中、スタッフからハート型のバースデーケーキが渡されたのだが、その途端に「待って、これ食品サンプル!」と驚きと喜びの混ざった声を放った。実は、水谷は食品サンプルを集める趣味を持っている。素敵なプレゼントを手に取って笑顔を浮かべた。帰りには、スタッフの手を通して、観客一人ひとりへ、そのお土産が渡された。お土産という名のプレゼント同様に、新たに挑戦したというアコースティックギターを用いての「いつだって」や、初の作詞に挑戦したという未発表の新曲の披露も、観客に向けた、確かなプレゼント。バースデーライブとはいえ、観客へのサプライズも忘れないところからは、水谷の優しさが滲み出ていた。
自分らしい恋愛の曲だという「空想トレイン」、肩を揺らし、愉快なリズムに乗った「気まぐれ王子様」を経ると、今年一年を振り返るMCへ。昨年の9月から11月は、足の手術で活動休止期間に入っていたため、その後は悔しい思いをすることが多かったが、その分、すごく生きた心地のした1年になったこと、ドラマの撮影を通して人間味のある人になりたいと思えたことを語る水谷の目には涙が光った。その目標を追求する限り、間違いなく、水谷の表現力は、磨かれていく。
ぴたりと合わさった手拍子が響いた「明日への扉」で本編は終了。後半で一段と歌う表情が柔らかくなっているように見えたのは、“人間味のある人になりたい”と自身の心のうちだけでなく、このステージで誓ったからだろうか。
アンコールで水谷は、グッズTシャツにロングスカートを合わせた格好で、颯爽と登場。巡り合わせを喜ばしく思えるような楽曲と紹介し、未発表の新曲を届けた。ファンレターや、SNS、ブログのコメントがあるから頑張れると感謝を述べる場面もあったこの日。1stアルバム『深呼吸』の全収録曲、カバー曲2曲、未発表の新曲2曲を取り入れたセットリストを歌い終えて、会場を多幸感に満たし、ライブを締めくくったのだった。
どこか幼さの残る話しぶりからは、無垢な少女を感じさせることもあるが、まさにその雰囲気に、水谷が愛される理由がある。守られるような雰囲気を残しつつも、今後も、様々な経験を積むことで、表現者、ひいては一人の人間として、新境地へと羽ばたいていく。
■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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<セットリスト>
1.君のステージへ
2.スプラウト
3.青い涙
4.恋のレシピ
5.ナナイロ
6.リブート(miwa cover)
7.優しいあの子(スピッツ cover)
8.朝が来るまで
9.いつだって
10.未発表曲
11.タカラモノ
12.空想トレイン
13.気まぐれ王子様
14.あしあと
15.明日への扉
アンコール
16.未発表曲