稲垣吾郎、ゲストの心を解き放つ話術 「インテリゴロウ」東村アキコとの会話のキャッチボール
稲垣吾郎は、本当にサロンの主人役がよく似合う。2019年3月末までおよそ8年間放送された『ゴロウ・デラックス』(TBS系)では、他に類を見ない読書バラエティとして、多くの著者と対話を続けてきた。惜しまれながら同番組は終了したが、その存続を求める声は絶えることなく、毎月第1日曜日に放送されている『ななにー』こと『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)内のコーナー「インテリゴロウ」に、そのマインドは引き継がれた印象だ。
「インテリゴロウ」では本の著者に留まらず、文化人を広く招いていくスタイルに。これまで香取慎吾が主演を務めた映画『凪待ち』の白石和彌監督、美文字の先生こと中塚翠涛、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの2大スターを迎えた最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のクエンティン・タランティーノ監督、そして日本中の話題をさらった『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督……と、そうそうたるメンバーが稲垣のサロンを訪れた。
稲垣のインタビュー風景を見ていると、目の前にいるゲストに対して本当に会いたかったのだという喜びが伝わってくる。どんなことを考えて作品を生み出しているのか、その思考回路を少しでも理解したいというリスペクトと探究心が見えるからこそ、ゲストも安心して話ができるのだろう。
この人ならまっすぐに思ったことを受け止めてくれる、という信頼。自分の言葉をより深めてくれる次の言葉が出てくるのではないか、という期待。言葉を投げかけるほどに、その呼吸がどんどん合っていく会話のキャッチボールは、やっている本人たちも楽しいだろうし、見ているこちらも気持ちがいいものだ。
11月のゲストは、漫画家の東村アキコだった。あまりテレビに出演しない東村だが、「仕事場がスタジオのすぐ裏で。歩いて2分くらいのところなんで(近いから)行けますよってことで」などと笑いも誘いながら、「吾郎さんに会えるんだったら来ようかな」と出演を承諾した理由を明かした。
東村の物言いは、まさに歯に衣着せぬといった雰囲気。そういうキレのある球を投げるタイプのピッチャーは、いいキャッチャーがいてこそのびのびと投球できるというものだ。オープニングでは緊張している様子もあったが、稲垣は東村の言葉を繰り返して、「なるほどね」と受け止め、安心して話せる空気を作り出していく。
そして、肩が温まってきたころに「東村さん、もっとテレビ出たほうがいいんじゃない」と返すのだ。テレビ的にも面白い発言であると、しっかりとフィードバックすることで、より自分の考えが求められているという気持ちにさせる。お世辞を言うタイプではない稲垣だからこそ、その一言がゲストの心を解き放つのだろう。さらに「収録なんで」というセリフに、“ここは自由に何を話をして大丈夫な場所“という番組スタッフへの信頼も感じられるのもニクい。
思ったことそのままの東村のストレートな発言と、その言葉を一つひとつ拾っていく稲垣の丁寧な仕事ぶりによって、トークはさらに盛り上がりを見せる。服装や目の描き方など、ディテールにこだわりを持っていることを話す途中で、思わず稲垣の目に注目して「白いところに全く濁りがない」と脱線していくところも、また味わい深い。
東村がそう言わずにはいられないほど、稲垣の白目が美しいのだと伝わってくるからだ。もちろん、稲垣も遠慮がちに謙遜はするものの、率直に話した東村の発言をそのまま届けてくれるのが心地良い。