流血するハリウッドを離れたポスト・マローンの再出発、『Hollywood's Bleeding』を聴いて

前作『Beerbongs & Bentleys』(2018年)収録の「Same Bitches」で、ポスト・マローンはLAに対し、「人口が400万人もいるのに、どこに行っても同じビッチに会うってどういうことだよ」と悪態をついていた。人々が互いに利用しようとするシティ・オブ・エンジェルズの環境に嫌気がさし、ポスティは同市を離れ、ユタ州に移った。今はビデオゲームに囲まれて幸せな生活を送っていると語る彼が、居を移して初めてリリースしたアルバムが今作『Hollywood's Bleeding』だ。同作は前作同様、ビルボードのアルバムチャート“Billboard 200”で初登場1位に輝いた。
しばしば“アーバン・ミュージック”とカテゴライズされるヒップホップだが、2019年はそれを覆すような出来事があった。テンガロンハットを被りパフォームする新鋭=リル・ナズ・Xの「Old Town Road」が、史上最長となる19週連続全米首位を記録したのだ。彼が標榜する「カントリー・ラップ」と呼ばれるジャンルの興隆が一過性のものなのか、はたまたヒップホップが今後進む方向を指し示すものなのかは定かでないが、いずれにせよにわかには信じがたい快挙であった。ただ、本人たちが意識するとしないとに関わらず、これだけ人気を博しながらSpotifyの公式プレイリスト「RapCaviar」に含まれることのなかった「Old Town Road」ヒットの背景には、「White Iverson」などのヒットがありながらXXL Freshman Classに選ばれることのなかった、かつて音楽ゲーム『ギターヒーロー』に明け暮れたロック青年の築いた基盤があるようにも思えてならない。
