Perfumeのライブは、なぜ“至上の音楽体験”をもたらすのか 3つのポイントから考察
2019年4月21日、筆者はカリフォルニア州の『Coachella Valley Music and Arts Festival2019』(以下、コーチェラ)の会場にいた。いま世界でもっとも人気の高いフェスとして知られるコーチェラに、Perfumeが初めて出演したのだ。
コーチェラは2週に渡り、ほぼ同じラインナップで開催される。初週の出演を終えたPerfumeに対し、『mixmag』『Rolling Stone』といった有名メディアは、コーチェラ初週のベストアクトの1枠として彼女たちを選出した。
評判は上々……だったはずだが、2週目のコーチェラではPerfumeの出演時刻が迫っても、会場のゴビ・ステージには数百人ほどの観客がいるのみ。日本での知名度や人気は関係ないとはいえ、さすがに厳しい状況だった。
しかしいざ3人が登場し、テクノロジー演出も交えながら「Future Pop」「edge(⊿-mix)」といったアップリフティングな楽曲を連打すると、みるみる内に観衆が集まってきて、中盤以降は会場が満員に。会場の外まで人が溢れ、世界各国から集まった観客たちは日本での観客以上に、自由かつハッピーに盛り上がっていた。
コーチェラでのPerfumeがこれほど盛況に終わったのは、同じ時間帯に強力なアクトが重ならなかったという幸運もあったかもしれないが、それ以上に彼女たちのパフォーマンスが、世界のトップクラス揃いであるコーチェラ出演者たちに引けを取らなかったからこそ、あれだけ多くの観客を惹きつけ、踊らせたのだろう。Perfumeのライブは確かに凄い。そのパフォーマンスの背景にあるものを、本稿では3つの要素に分けて考えてみたい。
1:演出・振付の妙
まず挙げられるのは、Perfumeのメンバーが13歳のときから共に歩んでいる(『プロフェッショナル 仕事の流儀』/NHK総合)、MIKIKOによる演出と振付の妙だろう。2016年11月14日号の『コンフィデンス』のインタビュー記事によると、リオ五輪の閉会式でのセレモニーを手掛けた際、通常200~300人のダンサーが必要とされる大規模なステージながら、諸般の事情で50人しか連れていけなかったという。しかし「そこはPerfumeなどでの経験が活きましたね。観る側の視点がどこに集中すれば良いのかを、演者の動きと音と映像と照明を全てシンクロさせることで誘導すると、例え東京ドームにたった3人しか立っていなくても、広さを味方にして3人が空気を支配しているように見せることができるんです」と彼女は語っている。この知見や工夫に基づく空間演出が、Perfumeのライブを他と一線を画すものにしている。
また同記事によると、MIKIKOがニューヨークに留学した際、ダンス表現において現地のパフォーマーと自分たちのギャップに悩んだそうだが、その違和感は欧米人と日本人の体格差や、筋肉の質の違いに起因することに気付いてからは、日本人の体型に合った振付をより意識するようになったという。それが角度を強調することで綺麗なフォルムを形作る、いまの振付に繋がっているそうだ。
優れた演出術と精緻でユニークな振付が、Perfumeを唯一無二のグループにしている一因と言えるだろう。