結城萌子が語る、川谷絵音や菅野よう子らと表現した“まっさらな自分”「豪華すぎて不思議な気持ち」

結城萌子が語る、川谷絵音らとの制作秘話

川谷さんは女性以上に女性のことがわかってる

ーー歌う時はどんなアプローチでした? 楽曲の主人公になりきるのか、自分の経験と重なる部分を使うのか、それとも技術的なことにこだわるのか。

結城:1曲目だったし、川谷さんと全くコミュニケーションを取ってない状態からレコーディングが始まったので、とにかく仮歌をめちゃくちゃ聴いてました。どういうディレクションをしていただけるのかもわからなかったので、最低限ちゃんと音だけは外さないようにしようと思って準備していきましたね。でも、この曲はさくさくとレコーディングが終わって。川谷さんからも特別なことはなく、2時間くらいで終わったんです。2年前なので細かいことは覚えてないんですけど、「今日はありがとうございました。では」みたいな感じで。あっさり始まって、あっさり終わったので、その時は、川谷さんはいつもこうやってるんだなって思いました。

ーーその後、印象は変わりました?

結城:その次に録ったのが「さよなら私の青春」だったんですけど、すごい青春ソングだと思って。私はこんな眩しい青春を味わったことがなかったので、どこからインスピレーションを受けたんだろうっていうのと、川谷さんは普段、こういうことを考えてる、乙女チックな方なのかなって思ったんですね。

ーー編曲は菅野よう子さんです。

結城:もともとファンだったので、とにかくびっくりしました。『カウボーイビバップ』や『マクロスF』を夢中で観ていたし、CMソングもたくさん手掛けてらして。生きていたら絶対に誰でも一度は菅野さんが携わった曲を耳にしたことがあるっていうくらい、すごい方だと思うんです。本当に存在しているのかなっていうくらい遠い存在ですし、『マクロスF』を見ていた当時の自分に「将来、菅野さんと仕事するよ」って言っても絶対に信じないと思う。川谷さんがいてくださったから、菅野さんも引き受けてくださったと思うので、本当に感謝してます。

ーーレコーディングのことは覚えてますか?

結城:「幸福雨」から1年以上期間が空いたので、川谷さんの考えが変わったのかもしれないんですけど、これは2日間くらいかかりましたね。川谷さんのディレクションについていくので精一杯で。日付をまたいでレコーディングをしていたし。千本ノックのようでした。

ーー求められたものはなんだったんでしょう。

結城:具体的にこうして欲しいとか言われないんです。ただひたすら、「もう1回」って何度も言われるんです。しかも、川谷さんと菅野さんが同席してる中で歌うっていう、緊張感MAXの空間で千本ノックを食らっていたので、とにかく、くじけない心でいました(笑)。

ーー途中で泣き出したくなるようなシチュエーションですね。どうしたらいいのかわかりませんって。

結城:中学の時が本当に厳しい部活だったので、厳しいことに免疫があったし、反骨精神が強い性格なので、言われたらやりますっていう気持ちもあるんですね。だから、この時は、中学の時の厳しい部活に感謝しました。厳しすぎて嫌だった時もあったけど、そういう経験をしていると、いざ、大事な時に、へこたれずに頑張れるなって。そういうのがなかったら、「無理です」って言って、普通に泣いてたと思う。自己表現がどうとかも考えずに、ただ、お二人についていくのがやっとっていう感じでした。

ーー青春時代を思い出すというディレクションだったのかも。

結城:そうですね。完全に野球部のような感覚で歌ってました。

ーーもうちょっと甘酸っぱいです(笑)。「散々花嫁」はTom-H@ckさんの編曲です。

結城:最初は『けいおん!』みたいなアニソンが来るかなと思ったんですけど、川谷さんの歌詞やメロディに寄せてくださって。

結城萌子 - 散々花嫁【Official Music Video】

ーーまた全然テイストの違うシティポップ〜歌謡AORになってますし、何よりタイトルや歌詞のインパクトが強烈ですよね。説明はありましたか? 〈チャンポン麺みたいな絶妙な塩梅で恋がしたい〉ってどういうことなのか、とか。

結城:全くないです(笑)。しかも、また訳ありな感じの女の方が出てきて。でも、散々とか言ってるけど、めっちゃ強気だし、一人でもやっていけそうな感じがしますよね。タフな感じが自分とも似ているなって感じて。あと、MVの撮影の時に、マネージャーさんが、〈散々な人生でも結婚すればいくらでもやり直せるわ〉っていう歌詞に対して、「そうだよね」って言ってて。女性はお付き合いする男性一人一人をリセットして恋愛するって言いますけど、私はその感覚がわからないんです。でも、こんなに身近にちゃんと共感する人がいるから、川谷さんって女性以上に女性のことがわかってるんだなって思いました。

ーー女性が共感する歌詞なんですね。最後の「元恋人よ」はミトさんです。

結城:デモを聞かせてもらった中では、一番心が揺さぶられた曲でしたね。

ーーピアノとストリングスによるクラシック小品のようなバラードになってます。

結城:それまでの3曲はアップテンポだったり、割とビートを感じられる曲でしたけど、次はバラードがくるっぽいですって聞いていて。私は山口百恵さんや松田聖子さんのような、昭和の歌姫が歌うバラードがもともと好きだったので、そういう曲が来るのかなっていう楽しみがあって。でも、私自身はバラードを歌った経験がなかったので、どういう気持ちでレコーディングに臨もうかなっていうのは、この曲が一番悩んだり、考えたりしました。どういう声色で歌おうかっていうところから丁寧に組み立てた曲でしたね。

ーー実際の歌入れはどうでした?

結城:歌詞に個人的な共感はないんですけど、なぜだか涙が出ちゃう曲なんですよ。歌うと泣いちゃうから、練習もできなくて。ただただ仮歌をひたすら聞いて、ちゃんと歌ったことないまま、レコーディングに臨んで。レコーディング中もじわっときちゃうんですよ。そういう不思議な力がある曲だし、アレンジだなって思います。理由のわからない涙が出てきちゃう曲だから、感情の流れが途切れないように、大切に気持ちを込めて、最初から最後まで、何回も繰り返して歌いました。

ゴリゴリのアニソンも歌ってみたい

ーー4曲揃って、ご自身にとってはどんな1枚になりました?

結城:豪華すぎて不思議な気持ちでいますね。私もなんで、こういう人たちが集まってくれたのかは明確な理由はわからないんですけど、タイミングとご縁が合致して集まってくださった方々なんですね。そのご縁にも感謝しつつ、『innocent moon』で私を知ってくださる方がほとんどだと思うので、少しでも興味を持ってくださったり、次の楽曲を楽しみにしていただけたら嬉しいなと思ってます。

ーータイトル『innocent moon』にはどんな思いを込めましたか?

結城:今回、スタッフの方が萌子さんがつけていいよって言ってくださったんです。私は今、声優としても歌手としても駆け出したばかりだし、まっさらな状態なので、まだ何にも染まってない私が初めてだすEPだよっていう意味も込めて“innocent”という言葉をつけて。あと、私は月や星、宇宙が好きなので。月っていうワードを入れたいなと思っていて。月はいろいろと形が変わるし、見る場所によっても違ってくる。私のことを知ってくださる方も、いろんな入口があると思うんですけど、声優としての結城萌子も、歌手としての結城萌子も、これからまた別の活動をしていくかもしれない結城萌子も。やっていることは違くても、みんな1つの結城萌子=月を見ているというイメージですね。

ーー冒頭に出てきた『セーラームーン』とも繋がってますしね。歌手としての今後はどう考えてますか?

結城:今回は、アニソン系のアレンジャーさんもいらっしゃいますけど、私的にはかなりオシャレな楽曲だなって思ったので、もうちょっとゴリゴリのアニソンも歌ってみたいし、その曲でアニメのタイアップが取れたら嬉しいなと思います。

ーーでは、声優としての結城萌子は?

結城:私、アニメ作品としては、リアルなものが好きなんです。割と今は、異世界に飛んだり、非現実的なアニメが人気ですけど、私がかなり現実主義者なので、ファンタジーであっても、リアリティを感じる作品が好きなんですね。例えば、『ウテナ』も、胸から剣が出てきたりしますけど、登場人物の人たちはかなりリアリストで、綺麗なものだけを描こうとしている作品ではない。どうしても叶わないものがあるっていうこともちゃんと描いているし、夢だけじゃなく、ちゃんと現実も見せてくれている。全てが綺麗というよりは、割と泥臭い部分が垣間見える作品の方が心を寄せやすしですし、そういう作品に携わりたいですね。人間じゃないものとか、自分じゃないものになれるのが声優の一番の魅力だと思うんですけど、私はどこにでもいるような人物に感情移入して表現するっていうことをやってみたいなと思っています。

(取材・文=永堀アツオ/写真=堀内彩香)

『innocent moon』

■リリース情報
『innocent moon』
2019年8月28日(水)リリース
価格:¥1,500(+税)

<収録曲>
「散々花嫁」(作詞/作曲:川谷絵音、編曲:Tom-H@ck )
「さよなら私の青春」(作詞/作曲:川谷絵音、編曲: 菅野よう子)
「幸福雨」(作詞:川谷絵音、作曲:川谷絵音/ちゃんMARI 、編曲:ちゃんMARI)
「元恋人よ」(作詞:川谷絵音、作曲:川谷絵音、編曲:ミト)
全4曲収録

■配信情報
タイトル:「散々花嫁」
各配信サイトはこちら

■関連リンク
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結城萌子 オフィシャルサイト
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<応募締切>
2019年9月3日(火)まで

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