Jay Som、Bedouine、Joanna Sternberg…USインディーシーンで活躍する女性SSW新作5選
今月はUSインディーシーンで活躍する女性シンガーソングライターの新作からピックアップ。
Jay Som『Anak Ko』
1stアルバム『Everybody Works』で一躍注目を集めた、LA出身のMelina Duterteによるソロユニット。先日行われた『FUJI ROCK FESTIVAL '19』でのライブも話題を呼ぶなかで新作が届けられた。最近、彼女は実家を出て自立。ずっと手放せなかったアルコールをやめて、新しく生まれ変わったつもりで新作に挑んだとか。これまでは一人で自宅録音していたが、今回はVagabonことLaetitia TamkoやAnnie Truscott(Chastity Belt)、Justus Proffittなど様々なゲストが参加。曲のダイナミズムやグルーヴに磨きがかかっている。また、Cocteau TwinsやThe Cureなど、80年代のニューウェイブバンドからの影響を感じさせる甘美なメロディがガーリーなロマンを感じさせたりも。「Anak Ko」とはタガログ語で「私の子供」という意味らしいが、フィリピン系アメリカ人というルーツを意識して我が子を生むように作り上げた本作は、Melinaの新しい一歩を祝福する力作だ。
Bedouine『Bird Songs of a Killjoy』
シリア生まれでサウジアラビア育ち。現在はLAを拠点に活動するAzniv Korkejianのソロプロジェクト・Bedouine。デビューアルバム『Bedouine』で注目を集めた彼女の新作は、前作同様、Matthew E. Whiteが主宰するレーベル、<Spacebomb>からのリリースだ。Adele、Beckなどのレコーディングに参加してきたGus Seyffertがプロデュースを担当。アートワークの雰囲気そのままに、70年代のシンガーソングライター作品を思わせる繊細で洗練された音作りで、羽根のように柔らかで内省的なAznivの歌声の魅力を引き出している。とくに表情豊かなオーケストラアレンジが心地良い浮遊感を生み出していて、優美な歌のなかにアシッドフォーク的な妖しい魅力が揺らめく瞬間も。Joey Waronker、Smokey HormelなどBeck人脈のアーティストが参加していて、BeckがプロデュースしたJudee Sillみたいな雰囲気がたまらない。
Joanna Sternberg『Then I Try Some More』
Joanna SternbergはNYを拠点に活動するシンガーソングライターで、本作が記念すべきデビューアルバム。彼女は漫画やイラストも得意らしく、恐らく本作のアートワークも彼女が手掛けたのだろう。散らかった机の上を前にして、途方にくれる女の子の表情が印象的だ。カントリーやフォークをベースにした歌は、ギターやピアノの弾き語りを中心にしたシンプルなもの。まず、惹きつけられるのは歌声だ。戦前のフォークシンガーのように純粋で、どこか哀しげ。無防備な感情が、とぼとぼとメロディのうえを歩いているようだ。『Pitchfork Media』ではDaniel Johnstonと比較されていたが、危うげな繊細さと微笑ましい無邪気さがユニークな魅力を生み出している。Conor Oberstが気に入ってツアーに同伴したことでも注目を集めているが、ぜひ生で歌声を聞いてみたい。