2ndフルアルバム『瞬間的シックスセンス』インタビュー
あいみょんが語る、作品に懸ける一瞬の閃き 「世の中には見逃したくないものがいっぱいある」
あいみょんが、2月13日に2ndフルアルバム『瞬間的シックスセンス』をリリースした。今作は、あいみょんが世の中の注目を一斉に集めた2018年に制作された作品。楽曲提供も含め多忙な中で作られた楽曲は、一曲一曲が際立っていて、彼女の一瞬の閃き、その閃きをすくいとる感覚をより強くしたのかもしれない。昨年の『第69回NHK紅白歌合戦』で披露した「マリーゴールド」、2018年はじめに作ったという「ひかりもの」、音楽的な新しい表現のあった「恋をしたから」を中心に、あいみょんの表現における信念を紐解く。(編集部)
面白いと思ってすくい取ってあげないと芸術は生まれない
ーー昨年は大晦日に『第69回NHK紅白歌合戦』に初出場しましたが、紅白の舞台はいかがでしたか?
あいみょん:リハーサルが3日間あったんですけど、本番までずっと本番なのかリハーサルなのかわからなかったといいますか。ステージで歌った時はあまり緊張していなかったんですけど、非現実な心地で。でもお会いしたかった方に直接会えた時に「私、紅白出たんやな」とようやく実感できました。
ーーリアルサウンドでリハーサルの取材に入っていましたけど、その時は松任谷由実さんに会いたいと言っていましたね。Twitterで番組終了後の松任谷由実さんとの2ショットの写真をアップしていました。
あいみょん:私はお会いできただけで「もう写真なんていいです」って感じだったんですけど、ユーミンさんから「撮りましょう」って言ってくださって。なのに私、久しぶりに会った親戚に人見知りしてるみたいな変な顔になってましたよね……なんでもっと笑わなかったんだろうとめっちゃ後悔しました。
ーー松任谷由実さんには昨年取材でお話を聞く機会があったんですけど、作品を作る際に、とにかく自分が作りたいものを作るということがまず前提にあり、リスナーには音楽で魔法をかけてあげることがアーティストとしての使命だという話をしていました。
あいみょん:使命感……。ファンの方とかスタッフさん、インディーズの時から応援してくださってる媒体の皆さん、いろんな方のおかげで今ここまでこれてるので、簡単には落ちられないなっていう思いはあります。でも私にはまだユーミンさんのような使命感まではないかな。いいものを作り続けたいっていう気持ちはありますけど、気持ちじゃどうにもならない場合もあるし。意外と常に客観的に自分のことを見ているので、アーティストとしての使命感というものを普段意識することがないかもしれないです。ファンにとって理想の自分自身でいたいっていう風に思うこともないですし。なんならファンの理想をぶち壊したいと思う方が強いです。
ーーそれは、これまでのインタビューでも話していたことですね。
あいみょん:そうですね。でもユーミンさんが言うみたいに、好きなこと、自分がやりたいものを作るというのは、絶対だと思います。だからこそ長く第一線で活躍されているんだと思いますし。すごくかっこいいなと思います。
ーーリスナーに音楽で魔法をかけるという点に関してはどうですか? ユーミンさんの曲だと例えば「中央フリーウェイ」という曲がありますけど、「中央自動車道」ではなくて、その風景を違う言葉に置き換えてイメージを掻き立てています。
あいみょん:すごくおこがましいんですけど、私もそういう風に作っていることがあるんじゃないかなって思います。今回のアルバムタイトルの「瞬間的シックスセンス」って言葉はもともとないですし、前作の「青春のエキサイトメント」もそう。あえてそういう言葉にしているんです。それは、その言葉で検索したら私のことしか出てこないようにしたくて。あと「瞬間的シックスセンス」っていう言葉は作った私以外は使えないに近いというか。「愛してる」とか「好き」という言葉はいくらでも使えるけど、「中央フリーウェイ」っていう曲も他の人は作品としては絶対使えない。
ーー作品の中には、そういう言葉を置きたいという。
あいみょん:そうそう。まさにこの前そういう話をしていたんですけど、井上陽水さんの「少年時代」の〈夏が過ぎ 風あざみ〉の「風あざみ」っていう言葉も造語なんですよね。「風あざむ」って確かに言わないなって。そういう言葉のパズルじゃないですけど、言葉を作ることで、そのイメージを感じさせるということは確かに魔法的であるなって思いますね。
ーーアルバムタイトルの話が出たので、今作について聞きたいのですが、前作の『青春のエキサイトメント』もかなりインパクトのある言葉でしたが、『瞬間的シックスセンス』はそれを超えましたね。
あいみょん:嬉しい。確かにそれは思います。私は基本的にアルバムタイトルとか曲のタイトルは最後に付けるんですけど、2枚目のアルバムを作ることになった時に、『瞬間的シックスセンス』っていうタイトルにするということだけは決めてました。もともと「瞬間的」っていうアルバムタイトルにしようとしてたんですけど、「あいみょん2ndフルアルバム『瞬間的』」って声に出してみると言葉のリズムがしっくりこない、モヤモヤするなって。漢字とカタカナの組み合わせが好きっていうのもありつつ『瞬間的シックスセンス』というタイトルにしました。
ーー一曲一曲を大事にする、瞬間を大事にするあいみょんさんらしい絶妙な言葉だと思いました。シックスセンス=第六感という説明できない感じも音楽的ですよね。
あいみょん:そう、説明できないんですよ、第六感って。飲み物を飲んで美味しいとか、サボテンに触れて痛いとか、味覚とか触覚とか私が曲に込めていることはそういう言葉だけではない。「マリーゴールド」を作る時に、麦わら帽子の女の子の後ろ姿が、揺れたマリーゴールドに似てるなっていうイメージが頭に浮かんだんです。その瞬間っていうのは、どこからの情報でもないんですよ。味覚でもないし、触感でもない。それって第六感としか思えなくて。だからその瞬間的に降りてきた第六感のアイデアをすくえるかすくえないかであの曲が出来上がってたかどうかが違っていた。もしあの麦わら帽子の女の子を私が無視してたら「マリーゴールド」は絶対できてなかったんです。
ーー「マリーゴールド」のサビの〈麦わらの帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似てる〉は確かに強く響きます。
あいみょん:普段から瞬間瞬間に色んなことを考えてるので、それを面白いアイデアと思ってすくい取ってあげないと芸術は生まれないのかなと思っています。
ーー「芸術は爆発だ」と言っていた、あいみょんさんが尊敬する岡本太郎さんにセンスがだんだん近づいていってるような……。
あいみょん:やばい。最近は一瞬の閃きとか、好奇心をいかに大事にするかみたいなのがすごくテーマになっていて。前作もそうですけど、私の作る音楽は瞬間的な第六感から生まれてくるのかなっていう。それと同時に瞬間的な第六感から生まれてくればいいなって思いもあって、『瞬間的シックスセンス』というタイトルにしました。だから世の中には見逃したくないものがいっぱいある。キョロキョロしないとって。