クリス・ブラウン、ダニエル・シーザー、シェイ・リア……高橋芳朗が選ぶR&B注目アルバム4選
ケイトラナダのクリエイティブパートナーとして彼のファンにはすっかりおなじみのシェイ・リアが7曲入りのEP『Dangerous』を発表。そのケイトラナダがプロデュースを務める「Blue」以下、「Dangerous」や「Voodoo」といった既発のシングル曲を収めた彼女にとって初めてのまとまった作品だが、ハウスフィールな曲、あるいはメロディアスな90年代R&B調の曲でひときわ輝く彼女の持ち味を的確に捉えた良作だ。アンダーソン・パーク「Am I Wrong」やマック・ミラー「Dang!」などを手掛けてきたDavid Pimentel (aka Pomo)の制作によるメランコリックな美麗ミディアム「Good Together」、オープンハイハットの連打が心地よいケイトラナダ製のクールファンク「Want You」など、全曲がハイクオリティー。UKソウル的な美意識に加え、かつてのジャネイを彷彿とさせる凛々しさがある。
最後はジンバブエをルーツに持つロンドン出身の19歳、コートニー・バーネットやジェイミー・アイザックを擁するMarathon Artistsと契約を交わしたレイチェル・チノリリのEP『Mama's Boy』。昨年のデビュー以降順調にシングルを重ねてきたが、この2nd EPのタイトルトラック「Mama's Boy」は現時点でのベストといえる仕上がり。ニーナ・シモンやエリカ・バドゥの影響を露わにした歌い手としての実力はもとより、好調Marathon Artistsの所属であること、プロデューサーとしてロイル・カーナー『Yesterday's Gone』に携わったジェームス・ドリングが絡んでいることなども踏まえると、活況を呈するロンドンのソウルシーンの新しいスターとして近い将来頭角を現してくる可能性は大いにある。全編アコースティックギターの弾き語りで構成された2016年の宅録EP『Bedroom Tales』からのこの成長ぶり、年齢を考えても本領発揮はこれからだろう。
■高橋芳朗
1969年生まれ。東京都港区出身。ヒップホップ誌『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。Eminem、JAY-Z、カニエ・ウェスト、Beastie Boysらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』の選曲も手掛けている。