BUMP OF CHICKEN『aurora arc』レビュー:バンドの歩みが“オーロラの弧”のように結実

 ここまで、今作の収録曲から如何にひとつのテーマが浮かび上がってくるか、について書いてきたが、サウンドそのものはバラエティに富んでおり、アーティストとしてのチャレンジ精神に溢れている。よくよく考えると、素朴な弾き語りの「ジャングルジム」、おごそかな響きを誇る「アリア」、軽妙なタッチの「新世界」は、曲調というよりは質感そのものがかなり違う。でも、どれも付け焼き刃では生まれ得ない、洗練されたアレンジによって、するりと聴くことができるのだ。物語や歌詞に焦点が当たりがちなバンドではあるが、ここ数年、どれほど彼らがサウンドを探求してきたかということも、今作には刻まれている。

BUMP OF CHICKEN「アリア」
ロッテ×BUMP OF CHICKEN ベイビーアイラブユーだぜ フルバージョン

 なお、BUMP OF CHICKENは、ファンがものすごく彼らや、彼らが生み出す作品に対して“向き合っている”バンドだと思う。7月10日に今作がリリースされた後、聴いた人それぞれの解釈が生まれることだろう。それらに触れてから、今作を聴くことも楽しみだ。そして、リリース直後の7月12日からは、『TOUR 2019 aurora ark』(こちらは「ark」=方舟の意味が名付けられている)もはじまる。そこから、また“BUMP OF CHICKENの物語”のページはめくられていくはずだ。まだまだ続く物語の中で、燦然と輝くオーロラの光は、これからの彼らや私たちを照らしていってくれるのではないだろうか。それほど今作は、とても重要で明快なアルバムだと思う。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

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