YURiKA×大原ゆい子ジョイントライブレポ 物語と楽曲があいまった新しい音楽表現
初もの尽くしでドキドキのライブ
中盤は、ゲストのYURiKAがライブを行い、「ここからは私が盛り上げ番長として頑張ります!」と、アッパーなナンバー「Dive into the colors」や「AKATSUKI DEPARTURE」などを歌い、しっとりしたムードを吹き飛ばした。さっきまで椅子に座って、じっくりと鑑賞していた観客も、ここでは立ち上がってサイリウムを振り、かけ声をかけたりジャンプをしたりして盛り上がる。YURiKAのアグレッシブなパフォーマンスで、客席の温度もみるみる上昇していった。そこへ呼び込まれた大原。「超あたためておきました」と笑うYUiKAに、「熱々ですね!」と返す。二人のトークは実にリラックスした雰囲気だ。音楽性もキャラクターも異なる二人だが、むしろそれがいいのか、実に仲の良い様子がステージの二人の様子から感じ取れた。
このジョイントライブでは前半の趣向を始めとして、初披露ものが実に多く、大原は緊張の連続だっただろう。15日にYURiKAが、大原の「言わないけどね。」をカバーしたことを受けて、大原はこの日YURiKAの「ふたりの羽根」をカバーした。歌い始める前は「ドキドキする〜」と、緊張感をあらわにしていた大原。しかし歌い始めると、不安はどこへやらで、勢いのあるバンドサウンドに乗せて爽快な歌声を響かせた。観客はそれに合わせて、ジャンプや手拍子で彼女の歌を盛り上げた。最後にはサインボールを客席にバットで打ち込むというパフォーマンスもあり、これには観客も嬉しそうにボールを追いかけていた。歌い終えるとホッとした様子で、「歌うのが、すごく難しかったです。YURiKAさんは、これを何で普通に歌えるんだろう? 私は男性キーに変えても難しくて……」と、カバーした感想をもらした。
また7月17日にリリースする新曲の「ゼロセンチメートル」を披露するときも、大原はドキドキしている様子だった。と言うのも、フルサイズを生で披露するのは、この日が初めてだったとのこと。今年7月から放送されるアニメ『からかい上手の高木さん2』のオープニングテーマで、爽やかさと心地よい胸キュン感のあるポップなナンバー。歌詞の端々から、アニメの高木さんと西片くんの微妙な距離感が想像され、大原のピュアさのある歌声と相まって、聴いているこちら側がドキドキした。観客もリズムに乗せてゆっくりと身体を揺らし、でも耳に意識を集中して楽曲に聴き入っていた。歌い終え「新曲も無事お届けできて、すっきりしました〜(笑)」と、笑顔が戻った大原に大きな拍手が贈られた。
大原の原案を元にしたショートムービーを観ながら、セリフやサウンドトラックの代わりに楽曲を聴く。しかも新曲まで。新しい手法で魅せた前半のステージ。アニメや映画の音楽制作の方法に、実際に映像を観ながらリアルタイムで音楽を付けていく「フィルムスコアリング」というものがあるが、どこかそうした生感と臨場感が感じられた。単に映像を観ながら歌を聴くだけでなく、セリフを想像するという楽しみもそこにはあったと思う。キャスティングと映像の雰囲気も大原の声や楽曲ともぴったりで、彼女の音楽の世界観が五感で感じられるものだった。
(文=榑林史章)