milet、二度目のライブで見せた堂々たるパフォーマンス 『SPECIAL SHOW CASE vol.2』レポ
「私の曲を聴いてくれてる人の顔が観れるのが嬉しい」
最初のMCでは、「この日をずっと楽しみにしていました。短い時間ですが、皆さんも音楽を好きなように楽しんでください」とあいさつし、「私の大切なデビュー曲です」と紹介した「inside you」へ。自分の中にいる誰か、いわば“私の知らない私”をテーマにした楽曲。歌とキーボードだけになるサビで一気にその世界観に引き込まれる。この吸引力はぜひライブで生で体験してもらいたいもの。また、ミュージックビデオでは体の中からは赤い羽根が噴き出していたが、この日は会場中を真っ赤なライトが満たしていたことも印象に残っている。そして、続く「Parachute」はこの日、唯一の新曲。最初はパラシュートが絡まったまま落ちてもいいくらいの愛を歌ったラブソングのように聴こえたが、聴き進むにつれ、楽曲の中の主人公はどうもそのような相手にはまだ出会っていないようだ。やはり、“私”は一人である。主人公は地面に一人で叩きつけられたのか、それとも全ては夢想なのか。「いつか皆さんの元にお届けできるように」という言葉を信じて音源化を待ちたいと思う。
「一人でおうちのピアノに向かって、本当に5分くらいでできた、私も大好きな曲です」と説明した「I Gotta Go」では、ある男と女の出会いと別れ、再会と死が二人を分かつ物語が、親密なムードで語られた。子守唄のような優しく切ない歌声から一転し、新たな旅立ちを歌った「航海前夜」ではバウンシーなビートに合わせてドラマチックに歌唱。1曲目の「Waterfall」で水の底から滝を眺めていた“私”が〈一人でも〉構わずに勢いよく飛び出したような高揚感を感じるパフォーマンスだった。
また、彼女はこの日のMCで何度も観客に感謝の気持ちを伝えていた。「私の曲を聴いてくれてる人の顔が観れるのが嬉しい」と繰り返し話していたが、それは、彼女の偽らざる本音だろう。
「今日、一番楽しみにしていたのは私です。みんなのことを思いながら作った曲たちだったので、直接届けられることが本当に嬉しくて。本当に会いたかったんです。私は他のアーティストの方のようにたくさん何かを積み重ねてデビューしたわけではなかったので、こんなにたくさんの皆さんにライブに来ていただけるのがまだ信じられなかったりするんです。私の歌を聞いてくれてる人が本当にいるのか? っていうことが、いつもちょっと心配だったり、不安だったりするんですね。でも、こうして、ライブで皆さんの笑顔を見ることができて本当に嬉しいです。これからもずっと、皆さんのことを私が見たいので、私が会いたいので、会いに来てください」
観客からの大きな拍手と歓声の中で、最後に『Wonderland EP』の表題曲で、映画『バースデー・ワンダーランド』の挿入歌として、原監督と作詞を共作した「Wonderland」を高らかに歌い上げた。渋谷のビルの軍を飛び越え、水の匂いがする風の中へ。音盤とは異なるシンプルな楽団のようなアレンジでフロアに音の粒を降らせ、「また皆さんの前で歌える日を楽しみに待ってます」と再会の約束をしてステージを後にした。滝が流れ落ちる水底から旅立ち、空高く水を飛び散らせたmilet。次は果たしてどんな風景を見せてくれるのか。8月にリリースされる3枚目のEPが今から楽しみでならない。
(取材・文=永堀アツオ)
■リリース情報
3rd EP『us』
発売:8月21日(水)
<初回生産限定盤(CD+DVD)>
<通常盤>
<CD>
01. us ※日本テレビ系2019年7月期水曜ドラマ『偽装不倫』主題歌
02. Diving Board
03. Rewrite
04. Fire Arrow
<DVD>
「Runway」MUSIC VIDEO
「milet SPECIAL SHOW CASE Vol.1 @ Billboard-Live TOKYO」