HIPHOP/R&B名曲をリメイクする『ReVibe』 発案者インタビュー&大前至による楽曲解説
ライター大前至による『ReVibe』シリーズの楽曲解説
往年の様々なヒップホップ/R&Bクラシックスを、今の日本の音楽シーンを代表するアーティストがリメイクして現代に蘇らせるという、ユニバーサルミュージックが手がける注目のシリーズ『ReVibe』。海外アーティストの有名曲を日本人アーティストがカバーするという手法は、昭和の時代からずっと行なわれてきたものであり、決して目新しいものではない。だが一方で、これまで『ReVibe』シリーズからリリースされてきた楽曲に関しては、オリジナルのコアな部分は残しながら今現在の視点でリアレンジし、楽曲に新たな価値観を与えるという、従来の“カバー曲”とは一線を画するものとなっている。
2017年末よりスタートしたこのシリーズの第一弾として登場したのが、ヒップホップバンド、P.O.Pによる、2パックの代表曲「Dear Mama」(1995年リリース)のリメイクだ。同時期に日本での公開がスタートした2パックの伝記映画『オール・アイズ・オン・ミー』がきっかけとなって制作されたという、このP.O.Pバージョンの「Dear Mama」。生楽器が活かされたジャジーなテイストのトラックにアレンジが少しだけ加えられたリリックが乗り、曲全体の質感は原曲とは全く異なる仕上がりになっている。それでいて、「Dear Mama」の芯にあるメッセージ性は全くブレておらず、同時にこの曲の新たな魅力を引き出すことにも成功している。
ボビー・ブラウンが1989年にリリースした大ヒット曲で、『ReVibe』シリーズの第二弾として昨年10月にリリースされた「Rock Wit’Cha」の向井太一によるリメイクも、原曲の新たな魅力を引き出したという意味では、さらに一歩先を行く作品と言えるだろう。80年代後半のR&Bシーンを代表する名バラード曲を、LAを拠点とするレーベル、<SOULECTION>の一員でもあるYukibebがプロデューサーとして再構築。原曲のキモであるメロディの美しさはキープしたまま、見事に現在進行形のフューチャーR&Bとして昇華させている。80年代に数多くのヒット曲を生み出してきたボビー・ブラウンと最先端のR&Bシーンを突き進む向井太一、その両者を知っている人にとっては、この取り合わせは少し意外に思えるかもしれない。しかし、実際にこの向井太一バージョンの「Rock Wit’Cha」を聴いてみれば、完璧なほどにしっくりとハマっていることに驚くであろうし、「Rock Wit’Cha」という曲そのものの良さに改めて気付かされるに違いない。