宇多田ヒカル「嫉妬されるべき人生」と映画『パラレルワールド・ラブストーリー』を繋いだ“運命”

 この運命というワードこそが、「嫉妬されるべき人生」と『パラレルワールド・ラブストーリー』を繋ぐ世界観なのではないかと考える。先述したように「嫉妬されるべき人生」は「命の果て」や「至上の愛」がわかりやすいテーマだった。しかし、映画と合わさることで楽曲の始まりの歌詞〈軽いお辞儀と自己紹介で/もうわかってしまったの/この人と添い遂げること〉にスポットが当たり、また違った印象に聴こえるのだ。実際に目に見えるもの、現実にあり得ることを超えたところに〈嫉妬されるべき人生でした〉と言える所以があるとするなら、アルバム『初恋』の楽曲に描かれている「特別な恋愛の情景」にも、運命的と形容出来る部分があるように思う。

 『パラレルワールド・ラブストーリー』は、現実と地続きの不思議な世界に入り込んだ気分にさせられる映画だが、主題歌が書き下ろしではなく既出の作品であること、それにもまた不思議な縁を感じる。まるで「嫉妬されるべき人生」が主題歌になるのは、ずっと前から決まっていたかのように。森監督が同曲を聴いて「これだ!これしかない!」と確信した理由を、映画のエンディングまで観た上で体感してみてほしい。

■渡邉満理奈
1991年生まれ。rockin’on.com、Real SoundなどのWEB媒体を中心にコラム/レビュー/ライブレポートを執筆。趣味は読書でビートたけし好き。

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