乃木坂46、選抜ライブに感じた変化の中で受け継がれる伝統 新たな地平へ向かうグループの姿を見た

乃木坂46、変化の中で受け継がれる伝統

 ライブ後半戦はアルバム『今が思い出になるまで』のリードトラック「ありがちな恋愛」を筆頭に、「命は美しい」や「シンクロニシティ」といったダンスで見せる楽曲、「スカイダイビング」や「ロマンスのスタート」というライブのアゲ曲を連発。その後、冒頭の齋藤飛鳥のMCへと続き、本編最後にメンバーの歌声やハーモニーを最大限にフィーチャーした「君の名は希望」で締めくくった。

 アンコールでは『乃木坂工事中』(テレビ東京系)のシングルヒット祈願企画の一環として、メンバーから振り付けレクチャーを受けた観客が「Sing Out!」を一緒に踊る一幕も。この日、「Sing Out!」のパフォーマンスを二度体験して感じたことだが、この曲はCDやMVからも存分に魅力は伝わるものの、真の魅力はライブ会場でメンバーと一緒に体を動かし歌うことで理解できるのではないか……だとしたら、この曲は7月からの全国ツアーで一気に“バケる“のかもしれない。その答えが出るのはツアーファイナルの明治神宮野球場3DAYS公演(8月30日から9月1日)まで持ち越しになりそうだが、ライブでどんどん成長していく曲であることは間違いなさそうだ。

 その後、卒業を控えた斉藤優里をフィーチャーした「13日の金曜日」や「ダンケシェーン」で会場の熱気を再沸騰させると、斉藤がメンバーやスタッフ、ファンに向けた感謝の気持ちが綴られた手紙を読み上げる。途中、涙ぐむ場面もあったものの、6月に発売が決まった初の写真集に触れ「夢は口に出していれば叶うということが肯定された気がします」と、彼女らしいポジティブな言葉で会場を温かな空気で包み込んだ。

 「乃木坂の詩」で2時間半近いライブは終了したかと思いきや、ファンの声援にダブルアンコールという形で応え、メンバーがステージに再登場。「ハウス!」でさらにハッピーな空間を作り上げ、横浜アリーナ3DAYS最終公演を完遂した。

 グループの顔といえるメンバーや初期メンバーの卒業が相次ぎ、乃木坂46は間違いなく変化のタイミングの渦中にいる。しかし、現在のセンターである齋藤飛鳥の揺るぎない言葉を前にした今、その変化に対して筆者は不安を感じることはない。むしろ、3期生や4期生が「守るべきもの」「変わらないもの」を携えつつ、ここからの乃木坂46をどんな地平に導いてくれるのか、それだけが楽しみでならない。

 すべての内容が異なりつつもそのすべてが乃木坂46と断言できる3公演は、その新章に向けた第一歩としては上出来だった。と同時に、本当に意味での真価が問われるのは次の全国ツアーであることも明確になった。ツアーを終え、2019年が終わる頃には乃木坂46がどこまで成長しているのか、これからの活動に注目していきたい。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■セットリスト
乃木坂46 23rdシングル「Sing Out!」発売記念 -選抜ライブ-
2019年5月26日(日)横浜アリーナ
00. Overture
01. Sing Out!
02. 何度目の青空か?
03. インフルエンサー
04. おいでシャンプー
05. 裸足でSummer
06. ぼっち党 [生田絵梨花、久保史緒里、桜井玲香]
07. ゴルゴンゾーラ[北野日奈子、堀未央奈、渡辺みり愛]
08. 頬杖をついては眠れない[秋元真夏、斉藤優里、白石麻衣、新内眞衣、高山一実]
09. 走れ!Bicycle
10. 夏のFree&Easy
11. ガールズルール
12. 太陽ノック
13. ジコチューで行こう!
14. 曖昧[生田絵梨花、松村沙友理]
15. 平行線[岩本蓮加、大園桃子、久保史緒里、阪口珠美、与田祐希]
16. のような存在[齋藤飛鳥、白石麻衣]
17. Am I Loving?[北野日奈子、鈴木絢音、星野みなみ、堀未央奈、渡辺みり愛]
18. 白米様[松村沙友理、伊藤かりん、佐々木琴子、寺田蘭世]
19. さゆりんご募集中[松村沙友理、伊藤かりん、佐々木琴子、寺田蘭世]
20. ありがちな恋愛
21. 命は美しい
22. シンクロニシティ
23. スカイダイビング
24. ロマンスのスタート
25. 君の名は希望
<アンコール>
26. Sing Out!
27. 13日の金曜日
28. ダンケシェーン
29. 乃木坂の詩
<ダブルアンコール>
30. ハウス!

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