草なぎ剛のシンプルな生き方 雑誌『GINGER』インタビューから感じたこと
デニム、ギター、バイクに車と、彼が愛しているものたちは、いずれもヴィンテージものが多い。草なぎのバイクはいつ止まってもおかしくないほど、年季が入っている。人によっては、使いにくさばかりが目についてしまうかもしれない。だが、草なぎはそんな年代物に、遠回りして味を増していく、生きる醍醐味を感じているのだ。
「その都度、その都度、“ここぞ!”というタイミングで良い出会いに巡りあうんです」という草なぎにとって、最近感じた最も良い出会いは愛犬のクルミちゃん。「食べるときは食べ、遊ぶときは遊び、待つときは待つ……。俗な欲に流されることなく、打算的な駆け引きをすることもなく、人間に換算すると1週間に値するといわれている犬の1日1日を、至極シンプルに生きている」。それは、まさに私たちが感じている草なぎの印象に近い。
計画的に、効率的に、打算的に。無駄なく、早く、早く、いち早く……と、いつの間にか私たちはいつもそんなふうに焦って生きているのかもしれない。立ち止まると、何かに置いていかれそうな不安を感じる人もいるだろう。しかし、道草を食ったからこそ見られる景色もあるし、バイクが止まってしまったからできる思い出も、二度と経験できないかけがえのない人生の瞬間に変わりない。
クルミちゃんと暮らし始めたタイミングは、草なぎが新しい地図をスタートさせたのと、ほぼ同時期。大きな環境の変化も楽しめたのは、きっとクルミちゃんのシンプルな生きる姿勢にヒントをもらったからかもしれない。そして、そんな草なぎ自身を見て、今度は私たちがより柔軟に、より身軽に、生きていくエネルギーをもらっている。「年々、自分もラクになっているし、毎日が楽しくなっていく」とは、なんて素晴らしい言葉だろうか。いつだって、過去よりも今が、いちばん楽しい日になるように。草なぎとクルミちゃんの仲睦まじい様子を、SNSやYouTubeで見ながら、そのシンプルな生き方を見習っていきたい。
(文=佐藤結衣)