指原莉乃がアイドルとして成し遂げた偉業 卒コンで語ったラストメッセージから紐解く

指原莉乃がアイドルとして成し遂げた偉業

 『AKB48選抜総選挙』前人未到の3連覇は指原を象徴する偉業の一つだが、彼女がこれほどまでに尊敬されてきたのは、信念を曲げない言葉の力があったからだ。指原が卒業発表後、あらゆる場面でメンバーに伝え続けてきたのが「優しくて強い女性になってください」という言葉。アンコールで指原はメンバーに加え、運営陣、秋元康、ファンへの言葉も伝えていたが、それが押し付けがましいメッセージにならないのは、AKB48グループに尽力してきた功績があってこそだ。「ファン、メンバーを信じてこれからも風通しのいいHKT48でいてください」という言葉、そして終演後の記者会見で彼女が話した「本気で変えたいんだったら、すべてを1からやり直さなきゃいけないと思ってるので、私ができることは手伝いたいです」というAKB48グループの現状についての一言は、卒業後もいつだってそばにいることを強く感じさせた。

 今年3月に亡くなった内田裕也とのコラボ曲「シェキナベイベー」では、松本人志(ダウンタウン)が内田のコスプレで登場。その模様は、彼女のタレントにおける側面を映し出していた。お互いの手で作った松本とのハートマークは、スタジアム全員の笑いをかっさらっていったが、卒業コンサートの2日前、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)においてもタモリとハートマークを作っていたことを考えると、彼女がタレントとして周囲の人間から親しまれていることを思い知らされる。「これからもHKT48を応援してくれるかな?」「いいともー!」のかけ声が許されるのは、後にも先にも『笑っていいとも!』(フジテレビ系)にレギュラー出演していた指原だけだろう。

 最後に、松本やタモリだけでなく、指原はメディア関係者にも愛されていた。20時30分にコンサートが終了し、指原の囲み会見が始まったのは22時を少し過ぎた頃。屋外の横浜スタジアムは冷え込み、待機しているのには過酷な環境だった。しかし、いざ会見が始まると100名はいるであろう記者陣を爆笑へと誘う。どんな言葉が飛び出そうとも、報道陣が笑顔になる会見もなかなかない。

 「私はなくって。いただいたお仕事を一生懸命やります」指原は今後の活動について、謙虚に答えた。すでに成功を収めているタレントとしての道に進むことは確実でありながらも、明言はしなかった。それはアイドルという肩書きを卒業した彼女が、改めて「指原莉乃」としての新たな一歩を踏み出した瞬間のように思えてならない。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

写真提供=(C)AKS

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