BLACKPINK、破竹の勢いの中でさらなるターニングポイントに? 最新EP『KILL THIS LOVE』評
本EPにはほかにもBLACKPINKの多様な魅力が楽しめる楽曲が盛りだくさんだ。たとえば「Don't Know What To Do」は恋人と別れたあとの寂しさを歌った曲だが、その悲しい歌詞とは対照的にトラック自体はアップテンポである。コーラスに至ってはダンサブルなリズムをドロップしており、パワフルなサウンドによってあえて悲しさを隠すような作風が見事だ。「Kick It」はヒップホップをベースにしながらも予想を覆すようなアレンジが施されており、ひとつのジャンルに特定できないような展開をしているところが面白い。「Hope Not」では雰囲気が一変してアコースティックギターに悲しい歌を乗せているが、BLACKPINKのエネルギッシュなイメージを考えればむしろ挑戦的なスタイルと言えるだろう。「DDU-DU DDU-DU (Remix)」はドラスティックな展開を繰り広げるエレクトリックサウンドで、オリジナルバージョンとはまた違った楽しみ方ができる。このように多様なスタイルの楽曲からは、BLACK(強さ)とPINK(可愛さ)の両方を兼ね揃えているという彼女たちのアイデンティティを感じることができる。
BLACKPINKはそのアイデンティティと武器を守りつつ、これまでにはなかったK-POPガールズグループの歴史を切り開いている。4月12日にはK-POPガールズグループとして初めて世界的な音楽フェスティバルである『コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル』に出演を果たし、バンドセットで力強いサウンドとパフォーマンスを披露した。そして1月から開催中のワールドツアーの北米公演では、全6都市のアリーナクラスのチケットがソールドアウトし、すでに2回の追加公演が決定。これまでもアメリカを含めた世界各国で人気を集めてきたBLACKPINKだが、『KILL THIS LOVE』は彼女たちが世界にさらに大きく羽ばたくポイントとなることは間違いないだろう。
■soulitude
日韓の大衆音楽事情を専門とするライター。歌詞・記事の翻訳や音源の流通、キュレーションなどの職業を経て、今は日韓の音楽シーンの架け橋となるべく活動中。
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