ミニアルバム『trumpet』インタビュー
Drop’s 中野ミホが語る、バンドが迎えた新たなムード「いままで通りじゃつまんない」
ルーツミュージックを大事に、音は新しく
ーー今回の新作『trumpet』でも、多保さんとのコラボ曲「毎日がラブソング」が収録されていて。ホーンを取り入れたソウルフルなナンバーで、「Cinderella」とはまったく違うテイストの楽曲ですね。
中野:そうですね。「次はどういう曲をやってみたい?」という打ち合わせのときに、“ルーツミュージックを大事に、音は新しく”という点で、Alabama Shakesの話になって。ああいう雰囲気を意識しつつ、多保さんがコード進行を持ってきて、そこからメロディと歌詞を一緒に作っていきました。
ゴスペルっぽいコーラスやホーンを入れたのも初めてだったし、ベースとドラムをループさせてトラックを作るというやり方も初で。ちょっとヒップホップみたいな作り方なんですけど、すごく斬新でしたね。
ーーボーカルもソウルフルだし、開放感があって。
中野:少しずつ抑揚を付けながら、エモーショナルに歌えたと思います。ライブで歌っていても、すごく楽しいし、テンションが上がるんですよ。Drop’sでここまでブラックミュージックに寄った曲はいままでなかったんですが、改めて「私はこの感じが好きなんだな」と気づきました。聴くのは好きだったんですけど、自分で歌ったことはなかったんですよね。
ーー歌詞に関しては?
中野:前回の「Cinderella」に続き、譜割りなどは細かくやりました。テーマ自体は、自分が感じていることがもとになってますね。すごくハッピーで明るい曲なんだけど、それだけの歌にはしたくなかったというか……。東京に出てきて、生活が大変だったり、1日1日を乗り切るのがしんどかったときに、「こういうときこそ、大事な人だったり大事なモノだったり、ひとつの存在が力になってくれるんだな」と感じて。一歩を踏み出す力がなかなか出ないとき、明日が迎えられるかどうかもわからないことって、誰しもが経験していることだと思うんです。そういうときに力を感じてもらえる、大きな歌になったと思いますね。ライブでもちょっと前からやっていて、みなさんが手拍子してくれたり、すごく盛り上がって。もっともっと期待が持てる曲だし、ライブで育てていきたいですね。
ーーそのほかの収録曲も開放感、前向きな気持ちが伝わる楽曲が中心になっていますね。
中野:前作の『organ』は冬らしい曲が多かったので、連作というか、今回は春っぽい曲、新しいスタートだったり、「ここから始まる」という気持ちを表現した曲でまとめたくて。「RAINY DAY」と「SWEET JOURNEY BLUES」は北海道にいるときに書いた曲で、「空はニューデイズ」と「ムーン・ライト」は東京に来てからの曲ですね。
ーー時期が分かれているんですね。
中野:そうなんですよ。「RAINY DAY」は北海道から出てくる直前くらいに書いた曲で。さっき言ったように、「何とかなる!」「とりあえず行くしかない」という気持ちだったし、「もう戻らない!」と自分を奮い立たせるような感じで鳴らしている曲ですね。「SWEET JOURNEY BLUES」も、まさに北海道の景色を歌っていて。これは冬のイメージなんですが、ひとりで景色を噛みしめているというか。生まれ育った場所に“さよなら”を言ってるところもあると思います。
ーーそのときの感情がそのまま歌になってる。
中野:日記みたいな感じというか、そのときに感じていることしか歌えないんですよ。これまでの曲もそうですけど、聴き返すと「このときはこうだったな」と思い出せるんです。楽しいときは“楽しい!”と歌えばいいし、さみしいときは、その気持ちを歌にすればいい。それはずっと変わってないですね。
ーー「空はニューデイズ」は、今回のミニアルバムのなかでもいちばん解放感のある歌だなと。
中野:はい(笑)。これは言っていいのかわからないけど、東京に来て、最初に始めたアルバイトがすごく厳しくて、つらかったんです。それを辞めたときに書いたのが、この曲なんですよね。めちゃくちゃスッキリして……。
ーーそのまま歌になったと(笑)。音楽以外のことでつらい思いをするの、イヤですよね。
中野:そうですね、ホントに。ライブでやっていても楽しいです、この曲は。ミナ子さんのビートがカッコよくて。ミナ子さんが加入してから、リズムのバリエーションが広がったんですよ。「こういうリズムはどう?」と提案してくれることも多いし、歌っていても気持ちいいです。
ーーそして「ムーン・ライト」は、ちょっと憂いのあるミディアムチューン。
中野:夜、ひとりで散歩してるときに感じたことがもとになってる曲ですね。札幌のときは夜中に散歩することなんてなかったけど、東京に来てから、いろんな街を歩くようになって。オフィス街のビルって、人はいなくても電気はついてるじゃないですか。それを見ながら歩くのが好きなんですよね。すごく贅沢だし、自由な気持ちになって。完全にひとりで、寂しいんだけど、自由というか。東京の好きな一面ですね、それは。
ーー「ためいき」「未来」のライブテイクも収録。新体制になって、ライブに対するスタンスはどう変わりましたか?
中野:「ライブではカッコつけたい」というのは変わってないんですけど、東京に拠点を移してから、「もっとちゃんとしなくちゃ」という意識が芽生えました。いままでは好きなようにやっていたし、しっかりやってるつもりだったけど、振り返ってみると「甘かった」と感じる部分もあって。それもミナ子さんの存在が大きいですね。東京の風を吹き込んでくれたというか、ずっとこっちでドラムをやっていた人だし、音楽に対する向き合い方がストイックなんです。その姿を見て、私たちもすごく刺激を受けてるので。ライブを観に来てくれる方に対する意識も変わりました。せっかく時間を作って来てくれてるんだから、1本1本大事にして、いいライブをしないとなって。“いまさら”ですけど、改めて思いますね、それは。
ーー4月1日にはワンマンライブ『APRIL FIRST CLUB’19』 を新宿レッドクロスで開催。4月7日には大阪、12日には札幌で 『ツーマン自主企画 Drop's 10th Anniversary「Sweet & Muddycheeks」』が行われるなど、ライブ活動も活性化。結成10周年については、どんなふうに感じていますか。
中野:“気が付けば”という感じで、アッという間でしたね。せっかくの10周年だから盛り上げたい気持ちはあるんですけど、むしろ「ぜんぜんこれからだな」というか、新しいことをどんどんやっていきたいなって。今のメンバーでやっとCDも出せたし、こだわりすぎず、怖がらず、いろんなことに挑戦していきたいです。特に私は「こうじゃなくちゃいけない」って凝り固まっていた部分があったと思っていて。「自分には関係ない」と思っていた物事にも興味を持って、柔軟に広げていけたらいいなと。
ーー音楽の幅も広がりそうですね。
中野:そうですね。いままでは私がアレンジの方向性を決めることが多くて、「こう来たら、こうなる」という流れがあったんですけど、それも意図的にはみ出してみたくて。もちろん「これは譲れない」というところもあると思うんですけど、バンド全体に「いままで通りじゃ、つまんない」というムードがあるんですよね、いまは。
(取材・文=森朋之)
■リリース情報
『trumpet』
発売:2019年3月29日(水)
価格:¥1,852(税抜)
01. 毎日がラブソング
02. 空はニューデイズ
03. ムーン・ライト
04. RAINY DAY
05. SWEET JOURNEY BLUES
06. ためいき*
07. 未来*
*「organ」Release Party “冬の日のおるがん” LIVE音源
■ライブ情報
<Drop’s ツーマン自主企画>
『Drop's 10th Anniversary「Sweet & Muddycheeks」(Ms.April)』
4月7日(日) 大阪 2nd LINE
w/ w.o.d.
4月12日(金) 札幌 mole
w/ DOUBLE SIZE BEDROOM
<Drop’s イベントライブ>
『荒吐宵祭19 -GROWING UP TO 20-』
4月26日(金) 仙台Rensa
『ARABAKI ROCK FEST.19』
4月27日(土) みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
『NAGANO CLUB JUNK BOX 20th Anniversary「COUNTER ROCK!!!!!」』
5月3日(金・祝) 長野CLUB JUNK BOX
w / The Birthday
『NIIGATA RAINBOW ROCK 2019』
5月4日(土) 出演会場(新潟市内11会場)・時間は後日発表
『SHINJUKU LOFT KABUKI-CHO 20TH ANNIVERSARY『ええじゃないか歌舞伎町』』
8月1日(木)新宿LOFT
w/ noodles / BimBamBoom / THE STEPHANIES
〈中野ミホ 弾き語り自主企画〉
『中野ミホの「うたかたイン・ザ・ムード」vol.2』
5月12日(日) 新宿レッドクロス
w/ and more...