DEAN FUJIOKAと観客が手を取り合って生んだ新たなヒストリー アジアツアー東京公演レポ

ライブから感じる、DEAN FUJIOKAの今

 その後は〈世界で一番幸せな/二人になろう〉という歌詞に楽曲が切ない意味を加える「Maybe Tomorrow」を挟んで、「Accidental Poet」では椅子に腰かけた彼がFrancis And The Lightsや、Bon Iverの『22, A MILLION』を思わせるゴスペル風コーラスをリアルタイムで生成するなど、最新アルバムに詰め込んだ実験の数々がステージ上で再現されていく。とはいえ、この日さらに印象的だったのは、これまで以上にアレンジを大胆に変更した終盤のメドレー群だ。ここでは「Newspaper」「Banana Muffin Blues」といったロック/パンク曲を皮切りに、続く「Showdown」も原曲とは異なるパンキッシュなアレンジで演奏され、ついには「Priceless」もパンクロック風のアレンジに。過去のライブではしっとりとした曲調で観客と合唱することもあったこの曲が、まったく別物と言っていいほど疾走感溢れる曲に生まれ変わっていく。様々な楽曲をリリースしてきた今だからこそ、そうした楽曲を使って“遊ぶ”ような雰囲気が、ライブをより魅力的なものにしていた。

 そしてDEAN FUJIOKA流の「桜ソング」として最新アルバムに収録された「Sakura」に続き、彼流の「みんなのうた」として未来を担う子供に向けられた「DoReMi」を披露する、いわば合唱ソングパートへ。とはいえ、「Sakura」はジャジーなトラックとDEAN FUJIOKAのラップを融合させたアーバンな曲調で、「DoReMi」にもトラップ特有のフロウが挿入されるなど、様々な音楽的なアイデアが詰め込まれている。以降は彼のヒット曲のひとつ「Let it snow!」を披露。「この曲は、ここにいるみなさんへの応援歌です。一緒に未来を作っていきましょう!」と伝えてはじまったアンセム「History Maker」では、サビで拳を天井に掲げ、会場いっぱいに観客の大歓声がこだまする。続く最新アルバムのタイトル曲にして中国語で歌われる「History In The Making」では、〈Put your hands up〉というコーラスを観客が合唱する中、左右のスクリーンに日本語の歌詞を表示。「共に未来を作ろう」「共に時代を作ろう」という自身のメッセージを伝えて本編を終えた。

 アンコールでは「Echo」や「Legacy」、そしてDEAN FUJIOKA自身のふるさと=福島県のことを歌った歌詞が、「故郷を持つすべての人々の歌」へと変わる「Fukushima」を経て、ラストはデビューアルバム『Cycle』の1曲目「My Dimension」を披露。アコースティックギターのストロークにあわせて、左右のスクリーンに「DEAN」「FUJIOKA」の文字が映し出され、UKロック風のメロディにカニエ・ウェストの「Stronger」辺りにも通じるラップが乗る、彼らしいボーダーレスな楽曲に観客の大合唱が生まれて、この日のライブを終えた。

 今年1月にリリースした『History In The Making』は、前作『Cycle』以降に制作された楽曲が、ここ数年間の彼の音楽活動のドキュメンタリーのように制作順に並べられている。そのうえで最終曲の「History In The Making」では、「ここからみんなで新たなヒストリーを作ろう」と未来への気持ちが歌われていた。音楽活動をはじめた最初期の楽曲から最新の楽曲までを横断しながら、ライブならではのアレンジも加えて観客とともに一体感を生み出したこの日のライブは、まさにDEAN FUJIOKAと観客が手を取り合って生んだ新たなヒストリーのひとつであり、彼のこれまでの感謝と未来への期待とが、同時に伝わってくるような一夜だった。

(写真=HIRO KIMURA)

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。

■セットリスト
『DEAN FUJIOKA 1st Asia Tour 2019 “Born To Make History”』
3月30日(土)東京・NHKホール

01. Permanent Vacation
02. Speechless
03. S.O.F.
04. Thirsty~Midnight Messenger~Mr.Taxi~Sweet Talk~April Fool
05. Maybe Tomorrow
06. Unchained Melody
07. Accidental Poet
08. Hope
09. Newspaper~Banana Muffin Blues~Showdown~Priceless
10. Sakura
11. DoReMi
12. Let it snow!
13. History Maker
14. History In The Making
15. Echo
<アンコール>
16. Legacy
17. Fukushima
18. My Dimension

■関連リンク
DEAN FUJIOKA オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる