『茅ヶ崎サザン芸術花火2018』サザンの音楽と花火が起こした感動 公式映像公開を機に振り返る

『茅ヶ崎サザン芸術花火2018』振り返る

 サザンの代表曲はもちろん、「勝手にシンドバッド」(1978年)、「みんなのうた」(1988年)、「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」(1998年)など、デビューから10年ごとのヒット曲も巧みに織り込みながら、〈江ノ島に明かりが灯る頃/艶づくは片瀬川〉という歌詞がこの場所とリンクする「SEA SIDE WOMEN BLUES」や、原由子がリードボーカルをとる「そんなヒロシに騙せれて」などの楽曲も交えた全13曲約1時間のあいだ、ノンストップで打ち上げられた“芸術花火”。それは本当に、あっという間の一時間だった。

 ちなみに、事前から告知していたように、「音楽」と「花火」を掛け合わせた“芸術花火”を単独のアーティストの楽曲のみで行うのは、今回が初の試みであったという。言い換えるならば、サザンだからこそ成立したとも言える。もちろんそこには、いわゆる名曲と呼ばれるものの多さや、今年デビュー40周年を迎えたその長いキャリア及び世代を超えてファンと築き上げてきた関係性など、様々な理由があるのだろう。けれども、それをサザンのホームタウンである茅ヶ崎のビーチで、しかも過ぎ去りし夏の記憶に思いを馳せるこの季節に開催したことは、それ以上に格別の意味を持っていたように思う。それは、デビュー40周年を祝うという意味はもちろん、改めてサザンが生み出してきた音楽の偉大さをーー花火が単なる火薬の爆発ではないのと同じように、それはもはや単なる音楽ではないのだった。聴く者それぞれの記憶や思い出とクロスオーバーしながら、果てはその人生にまで寄り添うような音楽。それがサザンオールスターズの音楽なのだ。

 そして、それがもたらす思いは、夜空に打ちあがる花火に寄せる思いが人それぞれであるように、また人それぞれなのだろう。そんな懐の広さと解釈の豊かさを持った稀有なバンド……やはり、サザンは特別だ。そのことを改めて感じさせてくれるような、文字通り特別な夜だった。そしてまた、いつかこの花火をサザンの別の曲でも見たいと思ってしまう。そんな夜でもあった。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

茅ヶ崎サザン芸術花火2018 - 公式メモリアル・ムービー

■開催概要
『茅ヶ崎サザン芸術花火2018』
[日時]10月27日(土) 開場14時00分 / 開演18時00分
[会場]サザンビーチちがさき(神奈川県茅ヶ崎市サザンビーチちがさき海水浴場)
公式HP
お問い合わせ:茅ヶ崎サザン芸術花火2018実行委員会事務局
TEL:050-3733-3743  
MAIL:info@chigasaki-southern2018.com

サザンオールスターズ オフィシャルサイト

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