SCANDALはどんな新しい姿を発信していく? レーベル設立や海外活動から読むバンドの可能性
昨年メジャーデビュー10周年を迎えたSCANDALが、ビクター内にプライベートレーベル<her>を設立し、3月27日に第1弾シングル『マスターピース / まばたき』をリリースした。端正なルックスと確かなバンドサウンドを武器に、デビュー間もない頃から“ガールズバンド史上○○”と名の付く数多くの記録を打ち立て、4年前から本格的に海外へ活動の場を広げる彼女たち。3月16日に幕張メッセ国際展示場で開催された『ビクターロック祭り』では、レーベル発足後初となるライブステージを踏み、堂々たる存在感で多くのロックファンを魅了した。
世界標準のロックを奏でる
『ビクターロック祭り』でも披露された新曲の1つ「マスターピース」は、ギターのMAMIが作曲。往年のハードロックバンドを彷彿とさせる、イントロの豪快なギターリフが耳を惹く。アッパーなビートはタイトだがグルーブがみなぎり、一転して壮快なサビメロが聴く者の気持ちをアゲてくれる。新レーベル<her>からの第一弾という通り、扉を蹴破って前のめりで新しい世界へとなだれ込むような勢いと、SCANDALらしいポジティブ思考が感じられる楽曲だ。作詞はドラムのRINAが手がけた。音楽の楽しさ、ライブ、ファンの存在などさまざまなことを連想させながら、春らしい清々しさと共に、新しい日々の始まりのドキドキを高らかに歌っている。〈無限の想像力〉や〈自分だけの地図〉といった歌詞のワードからも、新レーベル設立にかける思いが感じられると同時に、聴く者の背中を押してくれる。歌詞の最後のほうに〈世界中に飛んでゆけ、あなたに歌ってるよ〉というフレーズが出てくるが、ここには、実際に世界中でライブツアーを行っているSCANDALだからこその説得力がある。
初の単独ワールドツアーは、2015年の『SCANDAL WORLD TOUR 2015「HELLO WORLD」』だ。国内31公演に加え、フランス、イギリス、シンガポール、台湾、アメリカなどを周る8カ国10都市で開催し、計8万人の動員を記録した。2016年には初のヨーロッパ単独ツアー『SCANDAL TOUR 2016 "YELLOW" IN EUROPE』を開催し、バスに寝泊まりしながら15日間で10公演を行った。また昨年は、『SCANDAL TOUR 2018 “HONEY"』と『SCANDAL from JAPAN TOUR 2018 ”Special thanks"』という2つのツアーで、アジア6公演と全米6公演を開催している。
海外進出の足がかりとなったのは、3rdシングル「少女S」(2009年)や5thシングル「瞬間センチメンタル」(2010年)など、多くのアニメソングを担当したことだ。海外のアニメファンに名前を知られ、『ANIME FESTIVAL ASIA 2010』など世界的に有名なアニメフェスに次々と招聘され、2011年に初のアジアツアーを開催して以降は、順調に世界各地へと足を伸ばしていった。
日本より厳しい目を持った海外で活躍できているのは、単にアニメソングを歌っていることや、日本のガールズバンドという物珍しさだけではない。確かな演奏技術とアグレッシブなステージパフォーマンスがあればこそで、年間数十本というライブを重ねてきた結果だ。実はメジャーデビューの半年前にも、アメリカの『Sakura-Con 2008』に出演したその足で、全米6都市のツアーを開催していたことがある。その時は決して満足のいく内容ではなかったようだが、そこでの経験をバネに研鑽を積み重ね、10年を経て今に繋がっていることを考えると感慨深いものがある。