和田たけあき×seeeeecun×キタニタツヤ、ボカロ文化発アーティスト鼎談 東名阪ツアー開催の理由

ボカロ文化発アーティスト鼎談

ボカロがあったから新しい文化ができていることに感謝したい

キタニタツヤ

――今回のツアーでは3人とも自分の曲を歌うんですか?

seeeeecun:そうですね。今までずっとそうだったので。

キタニ:「僕たちはただボカロPとして完結するものではないです」っていう意思表示にもなりますよね。それこそ「自分はシンガーソングライターです!」って言ってアルバムも出したし。

――キタニさんはこれからシンガーソングライターとして活動するわけですが、こんにちは谷田さん(ボカロP名義)としても今後活動されることはあるのでしょうか?

キタニ:あんまりやるつもりないですね!(笑)。こうやって言うと、もともといたファンの方に「えー、やってよー!」って言われがちなんですけど、僕は今までの名義で活動するつもりはなくて、これからはシンガーソングライターで頑張っていこうって思っています。お二人はどうなんですか?

和田:僕は今まで通りですね。単純に自分の作品だとボカロ版のほうが好きなんですよ(笑)。

キタニ:はははは(笑)。

和田:やっぱり歌うのは、アーティストだぞっていう意思表示と、ライブがしたい、この二つの要因から成っているんですよ。そう考えた時に、自分の作品として一番いい形は今のところはボカロだなとは思ってはいるので、両方やっていきます。ただ、ボカロPって名乗るのはやめようかなと思ってます。僕最初から別にプロデューサーのつもりはないけど、ボカロPですって自分で言っちゃってたらそりゃプロデューサー扱いされるよなと。

――そういえば、seeeeecunさんとこんにちは谷田さんの名前にはPはついてないですけど、なにか理由があったんでしょうか。

キタニ:それはシンプルにP名をつける文化が徐々に廃れてきているからですね。活動したての時、動画のタグに「なんとかP」がいいんじゃないかってリスナーの方に提案されたんですけど、僕は積極的にそれを消してて。

seeeeecun

seeeeecun、和田:はははは(笑)。

キタニ:一種オタク文化としての伝統だったんですよ。俺はボカロ大好きだったけど、P名をつけることで自分の可能性を絶って、周りに対してある種の壁を作ってしまうことになるのは嫌だなって。ボカロが歌ってる曲だとボカロファンしか聴いてくれないけど、僕が歌ってると中学、高校の同級生でさえも聴いてくれるんですよ。僕がボカロをやらなくなったのもそういう明確な変化を感じたからで。ただ、ファンベースを築けたのは、ボーカロイドの世界のおかげなので、そこへの感謝は絶対に忘れたくはないし、これからもボカロ曲は普通に聴く。だから、表現的には間違いではないけど、ボカロを踏み台にしているように見えてるのはちょっと寂しいかな。自分にとっては、今まではボカロの力を借りて来たから、これからは独り立ちしていくんだよっていう気持ちですね。

和田:僕はボカロを始める前から、自分含めて聴いてきた人たちも全員アーティストだと思っていたから、ボカロは音源だと僕はずっと思ってる。

seeeeecun:でも結局ボカロっていう文化があったから今のネットシーンがさらに盛り上がっているんだと思うんですよ。さっきも話したようにボカロ文化が発展して歌い手さんが自分で曲を作るようになったりしている。それはすごいことだと思っていて。だからボカロを忘れようとかじゃなく、ボカロがあったから新しい文化ができていることに感謝したい。

和田:あと最近思うのが、初音ミクはもうアーティストとして成立してるということ。キャラではあるけど、存在がでかすぎて、僕らの仲良いボカロP達にも初音ミクをメインにしている人って実はほとんどいない。

seeeeecun:はるまきごはんくらいじゃない?

和田:そう、はるまきごはんぐらい。今はv flowerが多い。キタニは鏡音リンちゃんが多いし、僕は音街ウナばっかりですし。多分初音ミクの存在自体に個性が表れ始めているから、楽器として使うには気が引けるというか。今まで皆で育てようとしていたけど、育ち過ぎちゃった感じがありますよね。

――初音ミクが、ひとりの人になったみたいな。

和田:僕はそう思ってて。まあアーティストになってるのは間違いない。

――和田さんは音街ウナやか結月ゆかりなどをよくMVに使われていますが、何か理由があるんですか?

和田:最近はMVにボカロキャラは出してないですけど、成り行きもあったんですよね。例えば「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」は結月ゆかりを使った曲を全部入れたベストアルバム的なものを作るにあたっての書き下ろし曲だったんですよ。そういうところからウナやゆかりをMVに出したんです。結果、すごく伸びたし、動画としてもあのスタイルが気に入ったので、一個のシリーズとして完成しました。シリーズ感があったほうが面白いしサムネがマカロンみたいになるから好きなんです。

seeeeecun:逆に僕、(みつき)さなぎ(イラストレーター)に、MVに絶対ボカロのキャラクターは出さないでって言ってたんです。もちろんボカロのキャラクターに対する書き下ろし曲なら別なんですけど僕の物語だからストーリーの中にボカロはいないんですよ。僕がストレスを抱えたことだし、実際に体験したことも含まれているので、なるべく、さなぎが書くイラストの女の子や男の子に寄りたくて。

――そういう意図が隠されているんですね。

seeeeecun:そうなんですよ。だからMVのスタイルは人によってかなり分かれているんじゃないかな。あと、僕はMVがものすごく好きで今まで色んなMVを観てきたんです。洋楽や邦楽などのいわゆる実写作品を観てきたから、こっちの界隈に来たときにアニメーションばかりなのには衝撃を受けて。実際に実写のMVよりアニメーションのほうが受け入れられやすい。と、思いつつも最近は実写MVをやりたいなと思っています。キタニの「I DO NOT LOVE YOU.」もカッコよかった。

キタニ:じゃあ、seeeeecunも外に出よう。

和田:これからseeeeecunも出演しないと。

seeeeecun:そういう新しいことも今後増えていく気がして。

――今回のツアーではそれぞれのどういったところを見せたいですか?

和田:僕自身ですね。やっぱりライブって僕の中では良否を超えた自分自身を魅せる場だと思っているんですね。MV、さらにはボカロで自分の楽曲を表現するとなると、自分の作品だとしても正直、そこに自分はいない気はしているんですよ。だからライブでは俺を見に来てくれ!っていう感じです。

――お客さんの反応もそこでやっとわかるというか。

和田:そうですね。反応に関しては、即売会とかでも感想を言ってくれる人もいるんですけど、自分自身とお客さんとのコミュニケーションはライブでしか成し得ないとは思うので。

キタニ:ステージ上で醜くもがく俺たちを見届けてくれっていう感じ。

seeeeecun:涼しい顔で曲作ってんじゃねえんだよ、っていうね。

キタニ、和田:ははははは(笑)。

seeeeecun:我々は生きているんだ!

キタニ:かっこいい瞬間も全然カッコよくない瞬間も含めて魅せられるのがライブという表現だと思うので全部洩らさず見てほしい。何なら動画録って、SNSで来れなかった皆さんにおすそ分けしてほしいし、今回行けなかった人がそれを見て、次は行くか!ってなれば嬉しいし。あと、このやり方が当たり前だと示すことでシーンの可能性の枝がどんどん広がっていくことの手助けになるんじゃないかな。

seeeeecun:最初に聴いた曲は有名なシングル曲かもしれないけど、ライブを観ることで知らなかった曲に出会えたり、アーティストのことをもっと知ろうと思えたりしてすごく楽しくなることがあるんですよね。そういう感覚を共有したいし、みんなにはもっともっと生で、ライブで音楽を楽しんでほしいなって思います。


(取材・文=小町 碧音/写真=はぎひさこ)

■ツアー情報
『Live Fes “Vox Box” Tour 2019』

【日時】
名古屋公演:2019年3月10日(日)
開場18:00 開演18:30
名古屋 CLUB ROCK’N'ROLL

大阪公演:2019年3月23日(土)
開場18:00 開演18:30
LIVE SQUARE 2nd LINE

東京公演:2019年4月6日(土)
開場18:00 開演18:30
Zirco Tokyo

【出演】
和田たけあき
seeeeecun
キタニタツヤ
Sori Sawada(3/10 名古屋公演のみ)
MI8k(3/23 大阪公演のみ)
かいりきベア(4/6 東京公演のみ)

【料金】
3,500円 (税込・1ドリンク500円別途)

【チケット発売】
■名古屋・大阪公演
2019年2月3日(日) 10:00~販売開始

■東京公演
2019年2月9日(土) 12:00~販売開始

【チケット取り扱い】
イープラス

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