Nobody、君に話しておきたいこと、ヒールの高さ……欅坂46『黒い羊』CW曲MVに注目
菅井友香×守屋茜「ヒールの高さ」
続いて、TYPE-Cに収録されている、菅井友香&守屋茜のユニットによる「ヒールの高さ」。『レコメン!』(文化放送)で菅井が同曲について「欅坂は思春期の葛藤とかの曲が多いんですけど、この曲はもうちょっと大人の世代の、新社会人とか就活生の子とかにより共感してもらえるのかな」と語っていたように、今まで欅坂が歌ってきた歌詞の世界の子たちが成長し、社会人になってから新たに生まれた葛藤を歌っているような楽曲だ。今までにない一つ上のステージを歌った楽曲で、それをキャプテンと副キャプテンの大人コンビが歌っているからこそ感慨深い。菅井が「本当に(守屋)茜がすごく綺麗なんですよ!」と説明するように、主人公の守屋はもちろん、菅井もまたとても美しく映し出されたMVとなっている。特に水中を泳ぐシーンは綺麗だ。
「もうあんな大きな闇の中だってこわくない。」「みんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。」という宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の一節から始まる同MVは、守屋の夢の中なのか、夜のバスに乗って埠頭へと向かい、そんな守屋に寄り添う菅井という構図で物語は進んでいく。『銀河鉄道の夜』は、本当の幸せは自分の身を犠牲にしてでも他者のために尽くすといった解釈もできる話であり、欅坂における2人の立場や歌詞の中の登場人物ともリンクする部分がある。最後のオチもいかにも文学的だ。
少女フレンズ「ごめんね クリスマス」
そしてTYPE-Dに収録されている、上村莉菜、尾関梨香、長沢菜々香、渡辺梨加によるユニット・少女フレンズの「ごめんね クリスマス」。監督は小林由依&土生瑞穂のユニット・線香姉妹「302号室」を手がけた月田茂。尾関以外、歌声はかなり未知数なメンバーが集まった同ユニットの「ごめんね クリスマス」は、好きな男女が別れるという切ないクリスマスソングではあるが、とても愛らしい歌声のアイドルソングとなっている。
MVについては、『ゆうがたパラダイス』(NHK-FM)で曲が初解禁された際に、尾関が「ひたすらゴロゴロしてます」とコメント。クリスマスソングで香港風のセットという斬新さの中で、それぞれのカットではクールに決めている4人が、キレはないが味のあるダンスを披露しているのが癖になる。そのギャップにどこかほっこりしてしまうのだ。これがアイドル好きの長沢が理想とするアイドル像なのだろうか、その愛らしさに何度も見返したくなるMVだ。
8thシングルは「黒い羊」が鮮烈な分、それを受け止めるためなのか、カップリング曲は比較的柔らかい印象がある。だが、どれも趣向を凝らしたMVばかり。秋元康が「僕の歌詞は、TAKAHIROの振り付けによって完成すると言っても過言ではない」とダンサー・TAKAHIROの著書『ゼロは最強』にコメントを寄せていたが、欅坂の曲はMVによって完成するのではないかと、8thシングルを見て改めて感じさせられた。
(文=本 手)