SEKAI NO OWARI、『Eye』『Lip』で増したプロダクションの説得力 より開かれ精緻な世界へ

 SEKAI NO OWARIが、ニューアルバム『Eye』と『Lip』を2作同時リリースした。クラシック、ロック、ダンスミュージックなど、メンバーの持つ多彩な音楽的素養が入り混じった折衷的な音楽性に加え、寓話的な物語を片手に現実の世界へと切り込んでいくアプローチはこの2作でも健在だ。というかむしろ、彼らのそうしたアプローチが、プロダクションがより緻密に大胆になったことでより説得力を増した印象がある。自分はこれまで、セカオワが描こうとしていたビジョンを誤解していたのかもしれない、と思ってしまうほどだ。

 先述したように、楽曲の持つキャラクター自体は、これまでのセカオワが持っていた魅力の延長線上にある。いちからがらっと作風を変えたというようなことでは決してない。ストリングスなどが担うクラシカルな旋律、エレクトロハウスやEDMマナーの構成、あるいはマーチングバンドを思わせる勇壮なアレンジ等々、これら2枚のアルバムのなかに詰め込まれた要素はどれも彼らがすでにかたちにしてきたものだ。しかし、この2作において、セカオワの世界はいままでにない没入感を獲得している。

SEKAI NO OWARI『Eye』

 目新しく感じられる要素としては、たとえば『Eye』収録の攻撃的なエレクトロハウス「Food」や「Re:set」、「Witch」でフィーチャーされているTB-303のアシッドサウンドだろうか。ダンスミュージックではもはや定番のサウンドながら、先述の2曲では硬質さとミニマルさが強調され、ボディミュージックやインダストリアルがリバイバルしつつある現在の空気感にもフィットしている。一方、同じ303が『Eye』のラストを飾る「スターゲイザー」(2017年のシングル「RAIN」カップリングでもある)ではメロディアスなリフで楽曲をサポートしているのも面白い。

SEKAI NO OWARI「Food」
SEKAI NO OWARI「スターゲイザー」

 興味深いのは、トラップやEDM、ネオソウルといったわかりやすい「今風」のアレンジではなく、ブーンバップ、エレクトロハウス、90年代の和製R&Bなどを彷彿とさせるサウンドを採用しているところ。とりわけ『Eye』収録の「ドッペルゲンガー」や『Lip』収録の「YOKOHAMA blues」は、洒脱なコード進行にファンキーなカッティングギターやベースラインが心地よく、都会的なR&BのフレイバーがJ-POPに浸透した90年代後半(わかりやすく言えば、「夜空ノムコウ」に至るまでのSMAPなど)に思わず思いを馳せてしまう。

SEKAI NO OWARI × 太陽とオオカミくんには騙されない♥ 「YOKOHAMA blues」トレーラー

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