香取慎吾、国内初個展そのものがNAKAMAとの芸術作品に アート活動追ったSP番組を見て

 さらに「人って褒めてもらったり、好意を見せられると相手を好きになっちゃうでしょ? なんか人生って、その積み重ねのような気がします」とも。このマインドは、香取がアイドルとして多くのファンと触れ合ってきた結果、刻まれたものに違いない。仕事の合間に描いていた絵を、ファンや多くのスタッフたちが「いいね」と褒め、愛を伝えてきたのだ。その愛の連鎖が、今の香取の作品には息づいている。

 アクリル絵の具をチューブからキャンバスに絞り出したり、手や腕で塗りたくったり、ダンボールに描いたり、切ったり、貼ったり……香取の創作風景を見ていると、躊躇することがない。そして「完成!」と口角を上げて目を輝かせると、すぐにまた「どんどんアートするよ!」と、次の作品へと取り掛かる。まるで、遊び疲れることを知らない子どものようだ。

 また番組では、香取の親友として長年となりにいた草なぎ剛の姿も。楽屋に持ってきた香取の作品を見て、開口一番「すごいね! おー! やったね!」という草なぎ。きっと一番そばにいた草なぎが、これまでもずっとこうして香取の絵を褒めてきたのだろう。「タイトルは『Lie.ARIGATO』です」と説明する香取に、草なぎは「ライ? ありがとう? どういうことですか? ライって?」と率直に聞く。子どものように夢中で描いた絵を、少年のようにまっすぐな心で見つめる草なぎ。タイトルを聞いて「この白いやつが嘘?」と草なぎが聞けば「この白いのはいつも絵描いてるときに着てる、あのコート」と香取が率直に答える。そのやりとりに、アートとは自由に楽しんでいいものなんだ、と嬉しくなる。いろいろと考察するのも、肩の力を抜いてシンプルに感じ取るのも、どちらも間違っていない。

 「(個展の準備を)やっていくうちに、コンサートのライブを作ってるのとすごく近い。今までやってきたことと変わらない。パリの大きなホールも、5万人のドームと比べたら気が楽になって(笑)」。その感覚は、もしかしたら開催する側の香取のみならず、個展に足を運ぶ側にとっても言えることかもしれない。個展とは、コンサートのライブと同じく、お互いが楽しく愛情を交わし、幸せになる時間と空間なのだ。

 尊敬と愛を発信して、縁が繋がって、もっとお互いが好きになって……その集大成が、今回の国内初個展なのだとしたら、この個展そのものが香取とNAKAMAの芸術作品だ。

(文=佐藤結衣)

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