香取慎吾は生き様そのものが“アート”である ルーブル美術館での初個展に寄せて
香取慎吾が今秋、初の個展を開催する。場所は、パリ・ルーブル美術館シャルル5世ホールだ。日仏友好160年を記念した、日本文化・芸術の祭典『ジャポニスム2018:響きあう魂』の公式企画のひとつとして開催される。
長きに渡り、国民的アイドルとして芸能界の先頭を走ってきた香取が、アーティストとしての才能を開花させて久しい。振り返れば、青森県津軽鉄道へのペイント作品、“世界一長いエスカレーター”としても有名な香港のミッドレベルエスカレーターのストリートアート、本財団パラリンピックサポートセンター内のオフィスエントランスの巨大壁画、『日本財団DIVERSITY IN THE ARTS』企画展への参加、宝飾ブランド・カルティエのギャラリーへの出品、BMWのアートカー発表……など、香取の作品を目にする機会も年々増えてきている。
だが、どこかで彼自身も「作家として紹介されるなんてすごくおこがましく、しかし正直すごく嬉しいです」と話すように、世間にもアイドルが芸術家を名乗ることに照れくささを感じる風潮があったように思う。実際に、今回の香取の個展開催にも様々な声が上がっているようだ。
以前、雑誌『芸術新潮』で実現した横尾忠則と香取の対談で、こんなやりとりがあった。
横尾「香取さんもこれから、いや、もうすでにいろんな人がサジェスチョンしてきているでしょう。その背景には、妬みとか、いろいろな意味があると思うんですよ。今のうちに叩いておこう、とかね」
香取「怖いなあ!」
横尾「怖いですよ〜、美術の世界は」
横尾自身も、評論家に「お前は現代美術のピエロだ」などと批判された過去を持つという。横尾は「“当たってる”と思ったの。活字にしてみんなに知らせてもらいたくはなかったけど(笑)」とユーモアを交えて話してはいるが、それが“美術の世界”では珍しくない風景のようだ。
現在、香取と日比谷・帝国ホテルプラザにてアートギャラリー『NAKAMAdeART』(6月24日まで)でコラボレーションをしている若手アーティストのひとり、吉田孝弥も“美術の世界”と香取に向けられた声について考えをまとめている。(参考:画家・香取慎吾について思うこと/吉田孝弥)
“美術の世界”にも、多くの決まりごとや伝統があるようだ。もちろん、そうした流れを受け継ぐことも素晴らしいと思う。だが一方で、その枠を飛び越えて見せるフロンティアが出てこなければ、新たな可能性も見いだせないのも事実だ。たとえば、香取をはじめとした新しい地図が、インターネットで新しいテレビの形を模索したように……。