TRF DJ KOO×守尾崇が語る、90年代J-POPとエイベックスサウンドが現代に伝えるもの

DJ KOO×守尾崇 特別対談

「MY LITTLE LOVERは超ライバル」(DJ KOO)

――90年といえばほかにも、B’zやZARDをはじめとするビーイング所属アーティストのヒット。そして、トレンディドラマの主題歌ヒットから小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」、CHAGE and ASKA「SAY YES」などが誕生しています。

DJ KOO:当時のドラマのヒット曲って今も変わらず歌えますよね。やっぱり、カラオケソングの存在って大きかったよね。

――あとは沖縄アクターズスクール出身勢の台頭ですね。2018年に引退した安室奈美恵さん、MAX、SPEED、DA PUMP、Folderなど。あと、ジャニーズでSMAPのヒットも90年代大きかったですよね。

DJ KOO:そうですね。あとは、90年代といえばヴィジュアル系。X JAPAN、LUNA SEA。それからバンド系だとイエモン(THE YELLOW MONKEYS)もいたし。B’zのギターの松本(孝弘)さんには当時、よく一緒に呑みに連れていってもらいました。

――どんなお話をするんですか?

DJ KOO:遊んでいるときは仕事の話はしないけどね。この間も松本さんの自宅へ行って、Rainbowとかマイケル・シェンカーとかのレコードを聴きました。あと、90年代といえばミスチル(Mr.Children)かな。小林武史さんがプロデュースしていたグループはどれも強敵でしたね。なかでもMY LITTLE LOVERは超ライバルでした。たしか『masquerade』を出した頃に、ミスチルとチャート争いになって……。ドリカム(DREAMS COME TRUE)のリリースもあったから三つ巴みたいな。

――THE JAYWALKなど、少し大人っぽい歌えるJ-POPヒットも90年代カラオケ文化を牽引しました。

DJ KOO:よくそれだけいろんなジャンルが収まる枠があったよね。それにglobeのアルバムも良かった。

――globeのアルバムのセールスが伸びたとき、KOOさんはどのように受け止めていました? 今だからこその質問ですけれども。

DJ KOO:いや、うち(trf)にもいい曲を書いてほしいなって(笑)。globeもいいけどtrfも忘れないでねって思ってましたよ(笑)。

――そうですよね。90年代のヒット曲の一覧を見ていて驚くのが、だいたいどの曲も知ってるんですよ。音楽マニアでなくても知ってるような曲ばかりで。時代を代表する文化として“音楽”があったことは大きいですよね。

DJ KOO:95年って、他の年と比べてもミリオンヒットがたくさん出た年なんですよね。その走りは、カメリアダイアモンドのCMタイアップだったのかな。その後、サビだけでも引っかかるような曲が作られていった印象もあります。サビ30秒間で良さが決まるとか、そんな発想の作り方は90年代に生まれたものかもしれませんね。CMで流れる部分だけ先に作っておくとか、当時よくありましたから。

守尾:そんな意味では、計算というとあまり聞こえがよくないですけど、どうマーケットで聴かれるかをちゃんと考えながら作りはじめた時期なんですかね。

DJ KOO:そういった作り方の技法がダンスミュージックは特にハマりやすかったのかもしれない。サビから始まってとか、ABCの構成で転調使ってインパクト出してみたいな。素材の切り貼りじゃないですけど、ペースト作業っていうのもハマってたんじゃないですかね。

――当時のエイベックスのカルチャーからは、リミックスへの強いこだわりを感じ取ることができました。trfも必ずリミックス集をアルバムとアルバムの間に出していましたよね。リミックスカルチャーを日本で広げたきっかけもエイベックスだったと言えます。

DJ KOO:ヨーロッパでは、シングルなどひとつの楽曲に対して当たり前にリミックスのバージョンが付いてますよね。僕らも楽曲によってはもっとダンスを意識したバージョンで聴いてもらいたいという考えがあって、リミックス集『HYPER TECHNO MIX』シリーズを出したりしていますし。逆にこのシリーズは、小室さんから任せてもらっていた部分があって。当時嬉しかったのは95年に出した『hyper mix 4』が100万枚超えたんですよ。リミックスアルバムがですよ。それは嬉しかったな。当時はまだ音先行というか、リミックスが持つ価値に今以上の意味がありましたよね。今は逆に音とMVがセット、MVありきな時代になっていて。リミックスでMVを作ることとかないもんね。

――そのような時代を経て、Spotifyをはじめとしたストリーミングサービスの時代がやってくると、アルバムよりも配信シングルで定期的に楽曲をリリースすることが大事になっています。リリース自体が宣伝となり、再び音で評価される時代になりつつあるというか。

DJ KOO:たしかに、どんどんリリースは増えていますね。今は、データのやりとりだけで作れちゃうし、サイクルが早くなってきているからリリース頻度を早くしたいんですよ。覚えてもらうためにも。

――データのやりとりの話でいえば、90年代当時はネット環境的に大変でしたよね?

DJ KOO:マスタリング作業のために海外にメールでデータを送る時、電話回線で送ってたからね。ISDNで。そこで、何時くらいに届くか逆算して、マスタリングの音をチェックしたりしてました。それってまだ10数年前の話だもんね。今と大きな違いだね。

――インターネットはいろんな流れがありますけど、日本でインターネットが広まったのはWindows95以降です。一般に少しずつ普及しはじめたのは97年、98年くらい。一般家庭での高速回線、ADSLが普及したのは2001年。ほんと、つい最近ですよね。

DJ KOO:不思議だよね。ネットが普及して音源データでやり取りする時代になって。いろんなコラボレーションもボーカルトラックだけ使ってどんどんやれちゃうし、90年代はPCでやるとはいえSSLのデカい卓を使って作業してたからねぇ。デスクトップで完成させる時代ではなかったから。

守尾:そうですね。あくまでオーディオは別で録ったものだったりとか。MIDIは使っていたけども……っていう感じで。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる