TRF DJ KOO×守尾崇が語る、90年代J-POPとエイベックスサウンドが現代に伝えるもの

DJ KOO×守尾崇 特別対談

現代にまで根付く90年代J-POP

――90年代らしさって、守尾さん目線だとどんなキーワードになりますか?

守尾:僕はシンセが好きで音楽をはじめたので、シンセが自然に使われるような時代になったのが90年代だなと思ってます。それまでシンセって、ちょっと特殊な楽器だったんですよ。

――80年代は、まだマニアックなイメージがありましたね。全体的に高価でしたし。

守尾:80年代ってまだ「シンセですよ!」って使われることが多かったんですけど、90年代くらいからシンセといっても特別なものじゃなくなくなりました。技術が進化したことによって、普通に制作でもライブでも使われるようになって。上手く融合していった時代かなと思います。

DJ KOO:シンセで曲を作る時代だね。

守尾:80年代にYAMAHAのDX7がデジタルシンセのポピュラリティーを切り開いて。90年代でサンプリングがポピュラーになって、そこから先は大きく変わってないかもしれませんね。

――90年代ならではのサウンド、機材でいうとどんなものになりますか? 80年代といえばDX7というエポックがありました。

守尾:そういう意味では、冒頭で話しましたが僕のなかではエンソニックのVFXとASRですね。小室さんがよく使っていた印象もあって。あと、音ネタをけっこう使うようになりましたね。要はサンプリングCDのこと。そのなかに「ヘイ!」とか「ワオ!」とかオケヒットとかがいろいろ入っていて。そのサンプリングを曲のなかに散りばめるっていう手法が一番使われた時代かな。

――そういえば、trfも94年にサンプリングCDを出してましたよね。

DJ KOO:はい。『Preset Sound』っていう。本物の音をそのまま出して、「EZ DO DANCE」でもそうなんだけどトラックを聞くと、普通の人だとこの音をどうやって使っていいかわからないようなノイズとかまで入ってるんですよ。それは実際に小室さんが手打ちで作っていて。あと、90年代といえばJD-800だよね。

守尾:1991年に出たRolandのシンセですね。

――プリセット53番のピアノの音を、小室さんはレコーディングで好んで使ってましたよね。

DJ KOO:やっぱり、90年代を象徴する明るいピアノサウンドだよね。

守尾:あれが当時の小室さんのピアノですね。

DJ KOO:本物のピアノみたいなサウンドではないんだけど、シンセならではのピアノで、ダンスミュージックのビートにぴったり張り付いていく綺麗なシンセなんですよ。「BOY MEETS GIRL」でも使われてますね。「CRAZY GONNA CRAZY」もそうだし、あの当時の小室さんのデータを見たらベロシティが全部127だったの。

守尾:ガツガツですか。全開ってことですね。

――それは、どういう意味ですか?

守尾:MIDIだと数値で強さ(ベロシティ)が出るんですけど、それが1から127なんですよ。それが全て127ということは、もともとキラキラした明るいピアノなんですが、さらに全開の明るさで使っていたということですね。あと当時の話でサンプルネタ的なことといえば、篠原涼子さんの「恋しさとせつなさと心強さと」をよく聴くと歌と関係ない「ファ~」って音が入ってるんですよ。これを小室さんが作っているところを僕はスタジオで聴いていて。これどうなるんだろう?って思っていたら、歌が乗ったらこんな効果になるんだ……みたいな。意外と隠し味サンプルがいっぱい使われていた時代ですね。

――あと、90年代といえばファッションの面白さもありますよね。ファッションと音楽の距離感も近かったです。裏原文化や渋カジ、アメカジ。スニーカー、アウトドアファッションなど、いろんな流行が生まれた。音楽でいうリミックスカルチャーじゃないですけど、ファッションにもそんなセンスが重要な時代になりました。

DJ KOO:スポーツ系もね。プーマとか、アディダスとか絶対に昔は私服にはしなかったじゃない? それを考えるとスポーツメーカーとか、いろんなミクスチャーが起きたよね。そういえば、先日、『90‘s REVIVAL FASHION FES』というイベントのイメージキャラをやらせてもらって、DJやトークショーを行いました。TRFは昨年25周年を迎えたのですが、イベントに親子3世代で来ている方もいて、これはすごいことだなと感じましたね。今年は平成最後だから、みんな90年代を振り返ってくれるのかな? こうやって文化は続いていくのかなって。

――そのイベントのDJでは、どんな曲をかけたのですか?

DJ KOO:最近だとね(安室)奈美恵ちゃんの「HERO」から入って、それからglobeの「Feel Like dance」いって「愛しさとせつなさと心強さと」、「BE TOGETHER」、「EZ DO DANCE」、「survival dAnce ~no no cry more~」、「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」で、最後にアンコールでSMAPとかかけちゃう。90年代の曲って、かけただけで雰囲気がバーッて変わるんですよ。でも、音が90年代の音だとパワーにかけるので絶えずリマスタリングしてる。1回MacにいれてゲインあげてEQかけ直して。EDM感覚のパワーのある音でかけられるようにね。MIX CD作ってみたいよね。

――CMでも、90年代の曲がよく鳴ってます。

DJ KOO:ファンションも音楽も、海外にあったいろんなカルチャーを日本へ引き入れて、それを日本独自のものとして再構築してまとめあげていったのが90年代っぽい感じがするんだよね。振り返ってみて思うんだけど、90年代リバイバルの先っていうか、俺、最近、和のユニットELECTRIC SAMURAI REVOLUTIONを組んでるのね。日本舞踊とかをやっていて。日本の伝統カルチャーとDJで組んでるんだけど、もはや海外コンプレックスじゃないんだよね。日本のみんなで作ったものが、2020年に生まれてくるような気がするな。

ーーちなみに、90年代J-POPは、90年代アーティストに多大なる影響を受けたというあいみょんヒットの流れもありますが、いまもなお若いリスナーからも評価が高いです。

守尾:今日話してて思ったんですが、当時は国内で音楽活動をガッツリ頑張っていた感がありますよね。今は、海外に出ようとするアーティストが多いじゃないですか。それだけじゃなく、海外の流れもちゃんと取り入れつつ新しいものを作ろうっていうエネルギーに溢れていたのかなって、語っていてすごく思いました。いろんな要素がいい方向に作用していた時代だからこそ、多種多様なヒット曲が生まれたんでしょうね。

(取材・文=ふくりゅう/写真=池田真理)

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