欅坂46 平手友梨奈は主人公であり続けるーー新曲「黒い羊」の一人称“僕”から感じたこと
「黒い羊」の初解禁直後、『SCHOOL OF LOCK!』のMCであるとーやま校長ことグランジ・遠山大輔が「ついに来たなという感覚」と感想を述べていた。今までは美しいダンスナンバーやパワフルな表題曲に対し、カップリング曲は「エキセントリック」や「月曜日の朝、スカートを切られた」、「避雷針」など、表題曲の裏とも言える、彼女たちの本質的で辛辣な内容の歌が並んでいた。それがついに表に出て来たのだ。「黒い羊」は、受け入れ難いカルト的な曲だと捉える人もいるかもしれない。だが、約3年半の活動を経て、欅坂と平手がどういう存在なのかが浸透してきた今だからこそ、世間に媚びることなく、自分たちの真のスタイルを貫くことを改めて決意し、それを表明した勝負曲のように感じた。
秋元康が「エキセントリック」が解禁される時に、755のトークで「そのうち、こういう曲を表題曲にしたいですね」とで呟いていたが、そのタイミングが今回だったのだろう。“僕”という一人称は、表題曲では「サイレントマジョリティー」から「風に吹かれても」まで続き(「ガラスを割れ!」は“俺”、「アンビバレント」は“私”)、それ以降はカップリング曲で使われていたが、今回満を持して主人公“僕”が表題曲に帰って来た。激動の2018年を経験した欅坂が出した答えが、平手と心中する覚悟というように感じた。
曲調に関しては、ピアノの旋律と低めの声で囁くような歌い出し、そしてたまに入る語りなど、どこか映画『響 -HIBIKI-』の平手が歌う主題歌「角を曲がる」を彷彿とさせる。歌詞もまた「自分の棺」や「夜明けの孤独」などの平手のソロ曲に近い印象だ。まだ発表されていないが、もし平手がセンターだとするならば代理が難しい曲だと考える。また約5分もある言葉が多いこの曲に、どういう振りが付くのだろうか。
欅坂の曲は、MVを見ると印象が変わるものが少なくない。齋藤もブログに「私はMVを通して、この曲への想いといいますか、聴こえ方が変わった気がしています」と綴っていたため、MVへの期待がより高まる。欅坂の初詣で、長濱ねると上村莉菜が茶髪になっていたことがファンの間で話題となっていたが、もしかして〈髪の毛を染めろという大人は何が気に入らない/反逆の象徴になるとでも思っているのか〉という歌詞を表現していたのだろうか。
表題曲が感傷的な曲となったことで、逆にカップリング曲がどう弾けたものになってくるのか楽しみだ。すでに、けやき坂46はカレーハウスCoCo壱番屋のキャンペーンソングである「君に話しておきたいこと」が収録されると発表されている。お互いのグループのカラーがより対照的になってきたことで、今後の2グループの関係性も気になるところ。続報が待ち遠しい。
(文=本 手)