THE KEBABS、キツネツキ、マテリアルクラブ、Cho_Nans…実力派バンドメンバーによる新活動
結成10年以上20年未満のいわゆる中堅にあたるバンドのメンバーが、母体のバンドとはまた異なる活動をスタートさせるケースがここ1、2年の間で増えてきている。
最近では、佐々木亮介(a flood of circle)、新井弘毅(ex.serial TV drama)、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、鈴木浩之(ex.ART-SCHOOL)による新バンド、THE KEBABSが話題となった。1月9日に初ライブを開催し、そこでデモCDを販売しているものの、オンライン上で確認できるのは、MVが制作された「THE KEBABSのテーマ」と、公式Twitterで一部公開されているリハーサル時の映像のみだ。現時点では、ストレートなロックンロールバンドという印象。「THE KEBABSのテーマ」は初期のa flood of circleに通ずる泥臭さがあるため、佐々木が書いた曲なのか? と思ったが、<出待ちに関わらない/気安く煽らない>というフレーズには田淵っぽさを感じる。また、リハーサル映像にある「まばゆいpart2」はその曲名自体がserial TV drama「まばゆい」を彷彿とさせるものである。このように、このバンドにはソングライターが複数人いるため、作曲の段階から各人の特色が混ざり合っているよう。全貌はまだ見えないが、かなり興味深いバンドだ。
今年結成15周年を迎える9mm Parabellum Bulletのメンバーである菅原卓郎と滝善充は、2017年にキツネツキというユニットを結成した。元々は、腕の負傷のためライブ活動を休止していた滝のリハビリとして始まったキツネツキ。そんな経緯があったため、9mmではギターを弾いている滝は、ここでは基本的にドラムを叩いている(そうではないケースもあるが)。隙間なく音をはめるタイプの9mmの音楽とは違って適度な余白のあるアンサンブルも、肩の力の抜けたユーモアを感じさせる歌詞も、ユニット結成の目的を鑑みると合点がいくだろう。1stアルバム『キツネノマド』では中盤に童謡のカバーが3曲連続で収録されていて、そのどれもがとてもよくハマっていたのも面白かった。また、メンバー2名のユニットだからこそ、ライブにおける自由度が高いのもポイント。昨年秋に行ったツアーでは“取り憑かれメンバー”と呼ばれるゲストミュージシャンも参加。公演ごとに参加するミュージシャンの担当楽器が違うため、その日ごとにキツネツキの編成も変わってくる――という偶発性を楽しむような試みとなっていた。
Base Ball Bearの小出祐介は、2018年9月、マテリアルクラブを始動。福岡晃子(チャットモンチー(済))を制作パートナーに迎え、(ほぼ)はじめてのDTMに挑戦している。Base Ball Bearは、バンドという形態に強い拘りを持ち、メンバー以外の音を入れないことを掟としながら活動を続けてきたが、湯浅将平の脱退を機に挑戦・模索をする過程で打ち込みやシンセサイザーなどを導入するようになった。その集大成的な内容となった2017年夏の日比谷野外音楽堂ワンマン『日比谷ノンフィクションVI〜光源〜』が、マテリアルクラブ始動のきっかけとなったようだ(参考:「テキスト版 放課後マテリアルクラブ」第1回)。そのため、マテリアルクラブは、バンド活動を通して小出が見出したひとつの可能性を、バンドから切り離したところで体現しているような印象。中学生の頃から日本語ヒップホップを聴き続けていたという小出のラップとリリックが、憧憬の域を完全に超えた、彼ならではの表現になっていることも特筆しておきたい。